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ロシア科学アカデミー哲学研究所の『仏教哲学百科事典』が完成


東洋哲学研究所が執筆・編集に協力

モスクワでの「出版発表会」に代表が出席

2012年5月23日


 同事典の総ページ数は1045ページ。仏教哲学の全体を扱った総合事典としてはロシアで初めてのものである。

 

 事典には次のように記されている。

  「仏教哲学に関するロシア初のこの事典は、わが国において仏教哲学を最も完全に集大成したものである。この事典は、仏教文明から生まれた各宗派や学派を取り上げ、仏教哲学の根幹を明らかにすることを主目的としたものである。そのため、冒頭に仏教の主要概念について、インドの他宗教やキリスト教、イスラーム教と比較しながら解説している。さらに、グローバル化時代における仏教の役割についての論文も掲載している。こうした概論を加えることで、モザイクのように分化している各項目が理解しやすいように工夫されているのであり、終章では世界の地域別の仏教伝播・浸透の歴史にふれている。その他、現代学術文献に必須の索引も付けられている」

 

 

東洋哲学研究所が担当したのは日本仏教関連の16項目。日本の各宗派や「立正安国論」「神仏習合」などの事項、また「日蓮」「清沢満之」などの人物について研究員が分担して執筆した。

事典の扉には「編纂作業への東洋哲学研究所の参加に深謝する」と記されている。 

 

 

 

 

同事典の出版発表会は、ロシア科学アカデミー哲学研究所で開催された「比較哲学国際会議」の席上、行われた。ここでは同研究所のアブドゥサラム・グセイノフ所長が「わが研究所が国外の研究機関と協力して執筆・編纂を行うのは初めてのことであり、東洋哲学研究所に心から感謝いたします」とあいさつ。また、事典編集の責任者である同研究所・東洋哲学センターのマリエッタ・ステパニャンツ・センター長が「これは、仏教を哲学思想の側面から総合的に捉え、集大成したロシアで初めての事典です」「仏教哲学を知ることは、あらゆる文化・宗教を学ぶことに通じていきます」と述べた。さらに、来賓の駐露インド大使から祝辞があった。

 

 

 

 

ロシア科学アカデミー哲学研究所は1929年創立。ロシアの哲学研究の中核的機関であり、約300人の研究員を擁する。東洋哲学研究所は2008年9月にも「世界の諸文化の中の仏教」をテーマに共同シンポジウムを開催するなど、交流を続けてきた。


出版発表会が行われた「比較哲学国際会議」は、「東西文化における哲学と科学」とのテーマで、5月22日から4日間にわたって開催され、中国哲学、インド哲学、イスラーム哲学などについてロシア内外の研究者30余人が発表した。東洋哲学研究所からは江口満委嘱研究員が参加し、初日の第2部で進行の議長を務めるとともに、第3部で「『科学的進歩』と東日本大震災後の日本社会を導く視座」と題して発表を行った。

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