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鳩摩羅什の国際セミナーに代表が出席


 国際セミナー・展示会「鳩摩羅什――哲人そして予言者」

◆主催:インディラ・ガンジー国立芸術センター
◆会場:インディラ・ガンジー国立芸術センター(インド・ニューデリー)
◆開催日:2011年2月3~5日 

東洋哲学研究所からの参加者:川田洋一所長・山田勝久委嘱研究員


        

キジル石窟研究所の前庭に建つ「若き羅什像」。眼前の千仏洞は中国新疆ウイグル自治区きっての仏教美術の宝庫であり、いにしえの亀茲国の仏教繁栄をしのばせる。

 

 

「法華経」をはじめ300巻ともいわれる多くの仏典を漢訳した鳩摩羅什(4~5世紀)。主催のインディラ・ガンジー国立芸術センターでは、開催の趣旨を以下のように述べている。

「妙法蓮華経」の古書写(559年、複製)

 

「インドと中国を往還した仏教の学僧たちは、両国の文化関係を進展させた。彼らは仏教を広めたのみならず、社会・経済関係の相互理解にも貢献したのである。またインド文明を中央アジアと中国に伝える先駆者でもあった。彼らの記録はインドでは失われたものの、中央アジアと中国の言語で多数残存している。彼ら偉大なる学僧の一人・鳩摩羅什について探求し、知識を交換するために、このセミナーを開催する。

 鳩摩羅什は、仏教の真髄を広めようという誓いを胸に、政治的・地理的な障害をものともせず、文化と言語の壁も越えた。彼の訳業には『金剛経』『阿弥陀経』『妙法蓮華経(法華経)』『維摩経』『八千頌般若経』、また龍樹の『中論』など54の仏典・300巻がある。

 鳩摩羅什の大才、叡智、サンスクリットと中国語の完璧なる練達、そして何より仏の梵音声への敬虔さは、世代を越えて認められてきた。その意味で、この国際セミナーおよび展示会の意義は大きい。彼は、その高徳において、また仏教の妙なる哲理体系を弘めた事実において、竺法護や玄奘とともに、高くそびえ立つ存在である。彼は純正にして深甚な、想像を絶するほど見事な訳経を生み出し続けた。鳩摩羅什の遺した珠玉の聖教群は、今なお最も権威ある聖教として、東アジアの実践的仏教において中心的地位を占め、その各派に影響を与え続けているのである」(趣意)

 

 

発表する川田所長。

この趣旨に基づき、セミナーでは、鳩摩羅什の「(1)伝記と伝説」「(2)漢訳文献」「(3)梵語原文」「(4)生涯と思想の関連事項」に関連して、インド・中国・台湾・日本・アルゼンチンならびにヨーロッパの5カ国から参加した研究者28人による発表が行われた。 

 

東洋哲学研究所の川田洋一所長は「鳩摩羅什から日蓮へ――法華経を通して」と題して、法華経漢訳に内包された哲理が天台仏教そして日蓮仏教において、どのようにとらえられてきたかを論じ、その生命尊厳観と人間主義の精神を現代世界に具現化していきたいと述べた。

羅什の故郷・亀茲 (クチャ)のスバシ故城

 山田勝久委嘱研究員(大阪教育大学名誉教授)は「鳩摩羅什の生涯とゆかりの町の調査報告」と題して発表。生地・亀茲から没地・長安(西安)まで羅什ゆかりの場所を自ら訪ねてきた体験を通して、彼の生涯を考察した。

 

そのほかの発表テーマには、「羅什の漢訳の原則と哲学」「大英図書館・敦煌文献における羅什」「18世紀チベット文献に見る羅什」「羅什とアビダルマ」「佛陀跋陀との論争の再考察」「中国の初期石窟寺院と羅什」「維摩経漢訳と中国文学への貢献」「中国における羅什と般若経」「13‐14世紀の中国文学から見た羅什翻訳仏典」「鳩摩羅什の坐禪三昧經と覚音の清淨道論――瞑想の二つの伝統」「訳業に反映されたタントラ仏教」「法華経の梵文と漢訳の比較分析」「印順の回心に見る人間仏教への羅什の影響」「カシミールとの関係」「羅什の生年について」などが含まれている。

各発表の要旨はインディラ・ガンジー国立芸術センターのホームページ(英語)で見ることができる。

 

 

敦煌で死んだ羅什の愛馬を悼む白馬塔

セミナーの閉会スピーチで、ロケッシュ・チャンドラ博士(インド文化国際アカデミー理事長)は、「法華経を世界に伝えた人物が3人いる。鳩摩羅什が釈尊の悟りを表現し、日蓮大聖人が実践の中で新たな生命を吹き込み、池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長(東洋哲学研究所創立者)がそのメッセージを世界192カ国・地域に広げたのである」と述べた。

 

またセミナーとともに同会場で開催された展示会「鳩摩羅什の生涯と遺産」にも東洋哲学研究所は協力。展示会では不世出の名訳者の一生とその広大な影響を、写真パネルや図版、関連文物などを通して紹介している。

翻訳する羅什(想像図、展示会より)

羅什が眠る西安・草堂寺の「舎利塔亭」

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