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「東洋学術研究」 通巻188号(第61巻第1号)

「東洋学術研究」 通巻188号(第61巻第1号)

2022年5月発行
1,400円(税込)

東洋哲学研究所創立60周年を迎えた2022年の『東洋学術研究』第61巻第1号では、本号と次号(第61巻第2号)にわたり特集「人間性の危機を乗り越えて」を連載する。

■特集 人間性の危機を乗り越えて(1)

新型コロナウイルスは人類に未曾有の危機をもたらした。わずか2年4カ月の間に、5.3億人が感染し、629万を超える人々の命を奪い去った。そしてコロナ禍による経済格差の拡大、子供を取り巻く環境の悪化、自殺者の増加、家庭内暴力の悪化が浮き彫りになった。また国家間の紛争や気候変動による環境の変化により、生命の危機にさらされた人々、苦しみに耐える人々がいる。釈尊が示した「毒矢の譬え」が想起される。無関心を排し、他者へのまなざしを出発点とした哲学的転回が今こそ求められている。今号では、「他者へのまなざし」を軸にした国内外の分野の専門家による論考を掲載する。ウイルス感染拡大の脅威を前にする国民、大規模な暴力を経験する市民、虐待される子どもたち、教育場面の集団に生きる個人、自殺を選択しようとする人間に目を向け、いかに哲学的転回が図れるのかを考えたい。

 

■法華経展とその世界――思想と伝播の系譜から

東洋哲学研究所は2021年、「法華経―平和と共生のメッセージ」展の開催15周年を記念して、「法華経展とその世界―思想と伝播の系譜から」と題してオンラインによる連続公開講演会を行った。本号では、同展の学術的価値や展示内容を踏まえたうえで、東アジアを中心に法華経が伝播した要因などについて発表した4人の識者の講演録と論稿を掲載する。

 

ほかに、コラム「シルクロード(絲綢之路)①」、「東洋哲学研究所創立60周年に寄せて」などを掲載する。表紙写真は、シャーバーズガリー(パキスタン)に現存するアショーカ王磨崖法勅(大村次郷氏撮影)。

 

※掲載時の役職は当時のものです。なお、これまでに発刊された「東洋学術研究」から、主な論文については、ホームページ内の「論文検索」から閲覧することができます。

 

※ご購入のしかたについては、「ご購入の方法」をご覧下さい。

内容

■【特集】人間性の危機を乗り越えて(1)

 宗教とレジリエンス――コロナ禍におけるブータン中央僧団の役割

 … ソナム・キンガ(ブータン王立ガバナンス戦略研究所教員)/訳・山岸伸夫(東洋哲学研究所委嘱研究)

 困難な時代の道筋を探る――政治的暴力のただ中での民間の戦略的行為

 … シェーン・バーター(Shane J. Barter/アメリカ創価大学教授)、テツシ・オガタ(Tetsushi Ogata/アメリカ創価大学客員講師)/訳・堀江聡(東京大学講師・翻訳家)

 子ども虐待にみる人間性の危機

 … 藤原 武男(東洋哲学研究所委嘱研究員)

 「他者へのまなざし」と未来の人間関係――自己複雑性・集団複雑性とネット社会――

 … 戸田 有一(東洋哲学研究所委嘱研究員)

 社会脳神経系とヒトの自殺についての一考察――新しい自律神経理論ポリヴェーガル理論に焦点を当てて――

 … 山口 力(東洋哲学研究所委嘱研究員)

 

■法華経展とその世界――思想と伝播の系譜から(連続公開講演会より)

 初期経典から『法華経』へ――仏教普遍化への道――

 … 古川 洋平(東洋哲学研究所研究員)

 法華経の系譜――インドから日本へ

 … 末木 文美士(東京大学名誉教授)

 写本研究から見える経典崇拝

 … ダシュ・ショバ・ラニ(大谷大学教授)

 聖典としての仏教――『法華経』にみる三宝の歴史性――

 … 下田 正弘(東京大学大学院教授)

 

■コラム

 シルクロード(絲綢之路)①トルファン(吐魯番)

 … 大村 次郷(写真家)

 

■東洋哲学研究所創立60周年に寄せて

 中日友好と文化交流に果たす東哲の多大な貢献

 … 趙 声良(敦煌研究院党委員会書記、前院長)

 諸経の王・法華経のたゆみなき研究と発展に期待

 … 賈 蕙萱(北京大学教授)

 平和をもたらす寛容の精神を基に対話と研究を

 … フェリックス・ウンガー(ヨーロッパ科学芸術アカデミー名誉会長)

 アジアから世界へ――法華経研究を通じた宗教・文化理解への貢献

 … ゴーパ・サバロワール(デリー大学准教授、ナーランダー大学元副総長)

 東洋哲学研究所の創立60周年を祝して

 … 金 在榮(西江大学教授、韓国宗教学会元会長)

 知識を渇仰する人類への絶え間ない貢献

 … ノーラニット・セータブット(タマサート大学評議会議長)

 

■連載「近代日本における価値哲学者の群像(3)」

 序――新カント派価値哲学とその受容史(3)

 … 伊藤貴雄(東洋哲学研究所研究員)

 田邊 元における「弁証法」の形成――「文化」を手がかりとして――

 … 福谷 茂(創価大学教授)

 牧口常三郎の価値哲学とそのコンテクスト――科学的教育学という構想の思想史的位置づけ――(2)

 … 伊藤貴雄(同)

 リッカート哲学の臨界

 … 九鬼 一人(岡山商科大学教授)

 

■文明間・宗教間対話レクチャー

 イスラム思想における極端派的伝統――ヌサイル派(アラウィー派)の源流思想における輪廻思想を事例として

 … 菊地 達也(東京大学大学院准教授)

 

■新刊紹介

『文明・歴史・宗教 トインビー・池田対談50周年記念論集』東洋哲学研究所編

 … 石神 豊(東洋哲学研究所特任研究員)

 

〈研究覚え書き〉

 現代フランスの宗教事情―イスラムに注目して

 … 満足 圭江(東洋哲学研究所海外研究員)

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