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【予約受付中】『新カント派の哲学と近代日本――受容と展開』

【予約受付中】『新カント派の哲学と近代日本――受容と展開』

2025年12月10日発刊
5,800円(税込)
ISBN 978-4-88596-091-8

内容

「19世紀後半から20世紀初頭にかけて世界的に影響力のあった新カント派哲学は、日本において大正から昭和初期にかけて大きく受容され、その影響は狭義の哲学にとどまらず、広く経済学・政治学・法律学・教育学、さらには評論・文学など多様な領域の思想家にも及んだ。それゆえ、新カント派理論への理解なしに近代日本思想史を正確に理解することはおよそ不可能と言えるが、今日まで本邦学界の同学派への関心は極めて希薄なものにとどまっている。こうした学術界の動向を踏まえ、『東洋学術研究』では連載「近代日本における価値哲学者の群像」全5回(2021年-2023年)を組み、近代日本の思想家たちが新カント派哲学との接点をもった意義を学際的に明らかにしてきた。

 

東洋哲学研究所では、編著者の伊藤貴雄研究員が研究代表者を務める科研費・基盤研究B「近代日本における新カント派受容の歴史と意義――社会科学との交渉を中心に――」および「昭和戦前期における新カント派価値哲学の展開・意義・特色――学際的/国際的研究――」に関係する研究者を中心に、総勢29人の専門家を執筆陣に迎え、41編の論文・コラムを通じて近代日本における新カント派の受容と展開を通史・総論的に網羅する学術書の刊行の準備を進めてきた。本書が、近代日本思想史や価値哲学の研究にとって今後の基本書となることを願ってやまない。

 

【目次】

発刊に寄せて………マーギット・ルフィン

 

関連人物・著作年表

 

序章

近代日本における新カント派受容史の再構築に向けて………伊藤貴雄

コラム 新カント派とは………辻麻衣子


第1部 前史——新カント派の哲学

バーデン学派の文化科学論——ヴィンデルバント・リッカートの系譜………九鬼一人

桑木厳翼とベルリンの哲学………大橋容一郎

 

人物案内コラム

①カントと「価値」の概念史………伊藤貴雄

②ヘルマン・ロッツェ——妥当論の提唱者………黒元将利

③エミル・ラスク——その思想の一端と影響………渡辺和典

④マールブルク学派の妥当論——コーヘンとナトルプにおける理性と歴史の観点から………下山史隆

⑤エルンスト・カッシーラー——『象徴形式の哲学』とダヴォス討論………庄子綾

⑥F・アドラー、S・コイト、W・J・フェルスター——倫理文化運動と新カント主義………大橋容一郎


第2部 大正期——受容と定着

ベルリンの左右田喜一郎………加藤泰史

超越的場所——西田幾多郎におけるリッカート価値哲学への応答………板橋勇仁

『永遠平和のために』と『ドイツ国民に告ぐ』——朝永三十郎とその時代………杉田孝夫

田邊元における「弁証法」の形成——「文化」を手がかりとして………福谷茂

大正期における文化論争と土田杏村のプロレットカルト論………大木康充

土田杏村『象徴の哲学』と西田幾多郎——あるいは「京都学派」前史………鈴木亮三

 

人物案内コラム

⑦篠原助市——批判的教育学の樹立者………宮本勇一

⑧吉野作造——民本主義と人格主義………杉田孝夫

⑨与謝野晶子——文化主義と人格主義………山本恵子

⑩鈴木宗忠——忘れられた宗教哲学者による知られざる新カント派受容………前川健一

⑪野村隈畔——野村隈畔と文化主義批判………大橋容一郎

⑫恒藤恭——恒藤恭と新カント派………久野譲太郎

⑬芥川龍之介とカント——「筋のない小説」をめぐって………福谷茂

⑭蝋山正道——近代日本の社会科学/政治学と新カント派の交錯点………芝崎厚士

 

特別寄稿

なぜリッカートなのか? ——一九一〇・二〇年代日本における新カント派の受容について………ハンス・マーティン・クレーマ

 

コラム

一九二二〜二四年『改造』誌上のリッカートの寄稿論文の背景について——東京富士美術館所蔵リッカート直筆書簡三通の新発見………ハンス・マーティン・クレーマ


第3部 昭和期——展開と継承

新カント派哲学者としての三木清——リッカート哲学の影響………玉田龍太郎

牧口常三郎の価値哲学とそのコンテクスト——科学的教育学という構想の思想史的位置づけ………伊藤貴雄

横光利一における「唯心論」と「唯物論」——「機械」をめぐって………位田将司

河合栄治郎の理想主義哲学とファシズム批判………松井慎一郎

近代日本の価値哲学における政治の概念——南原繁の政治哲学の思想史的位置をめぐって………川口雄一

ヴィルヘルム・ヴィンデルバントと南原繁——ドイツ帝国と帝国日本のプラトン解釈………田渕舜也

 

人物案内コラム

⑮高橋里美——新カント派をめぐる人物交流と体系の構築………直江清隆

⑯和辻哲郎——和辻哲郎と「文化価値」論………大橋容一郎

⑰戸坂潤——新カント派としての………福谷茂

⑱高坂正顕——カント研究と歴史哲学を繫いだ新カント派研究………渡辺恭彦

⑲高橋ふみ——近代日本初の女性哲学者………石神豊

⑳佐藤省三——「日本新カント主義」の可能性………福谷茂

㉑丸山眞男——価値(超越性)と歴史(存在拘束性)の狭間で………田渕舜也

㉒廣松渉——戦後日本における新カント派の継承と再興………渡辺恭彦


終章

近代日本における新カント学派受容史研究の対象と方法——国際/グローバル文化交流研究からの考察と展望………芝崎厚士

 

編者あとがき

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