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第37回 学術大会

 

(上段左から、同志社大学教授の峯陽一氏、東京大学大学院教授の中谷和弘氏、東洋哲学研究所委嘱研究員の玉井秀樹氏。下段左から、同研究所の委嘱研究員で司会の蔦木栄一氏、所長の桐ケ谷章氏、研究員の岩木秀樹氏)

 

第37回学術大会が5月27、28日にオンラインで開催された。研究所の学術大会は、国内外の研究員・委嘱研究員が集い、法華経研究をはじめ宗教間・文明間対話、平和と人権、環境問題などの課題克服の研究成果を発表する機会であり、それぞれの専門・研究分野を踏まえたテーマで発表を行った。

 

1日目(5月27日)にはシンポジウム「21世紀の精神のシルクロード――平和への道筋を考える」をオンライン(登壇者はZoom、参加者はYouTubeLive配信にて視聴)で実施した。※シンポジウムの詳細は「東洋学術研究」に掲載

 

シンポジウムは、創立者・池田大作先生による「SGIの日」記念提言発表40周年を記念するものです。第3次世界大戦・核戦争の危機を回避し、人類を分断から連帯へと導くことを一貫して発信してきた提言を基に、人類が今、21世紀のシルクロードたる地理的・文化的・歴史的なつながりを再認識し、共に生き、共に幸福を享受し、共に平和へと歩んでいくためには、一体何が必要なのか―—こうした問題意識を論じ合うことを目的として企画された。このテーマに対して、中谷和弘氏(東京大学大学院教授)と峯陽一氏(同志社大学教授)の2人を招聘し、当研究所の研究員の岩木秀樹氏と委嘱研究員の玉井秀樹氏とともに発表を行った。

 

シンポジウムでは、桐ケ谷章所長の挨拶の後、それぞれが以下の発表を行った。

 

●幸福平和学の試み――戦争に抗す福祉的安全保障――

(岩木秀樹 東洋哲学研究所研究員)

戦争から福祉への移行が喫緊の課題であるとして、GDPではなく人間と地球の健康という視点(ウェルビーイング)から捉えることが重要です。創立者は、人は国籍や民族などで区別されるのではなく、一つの命として地球に生まれたと訴えています。現在の戦時下にあって、創立者が指摘する地球人精神を今こそ吟味しなければならないのです。

 

●「戦争」を乗り越える人間の創造性――池田SGI会長の平和提言に学ぶ

(玉井秀樹 東洋哲学研究所委嘱研究員)

戦争を乗り越える人間の創造性を発信されてきた創立者の平和行動は、その証しとして多数の名誉学術称号に表れています。「人間をどうするべきなのか」という原点に立ち返り、国連を舞台に提言を行い、国際人道法や国際人権法に注目してきた創立者の提言は一貫して、人間性の喪失に向きあうことを論じてきました。現下の国際情勢にあって、自分自身が変化するという勇気を引き出し、イスラエルとパレスチナを和解に導いたノルウェー・チャンネルで見られた紛争当事者の変化は非常に示唆に富む出来事です。対立・紛争を乗り越え、対立をいかに創造的に統御するのかという視点を学んでいく必要があるのです。

 

●21世紀の戦争、平和、尊厳

(峯陽一 同志社大学教授)

大切なのは、一人一人の人間に価値があることであり、人間は決して手段ではなく目的であることを再確認することです。私たちは、人と人の間に挟まれて、他者との関係性のなかで生きています。このことは、池田SGI会長のモスクワ大学講演の内容にも重なります。世界のあらゆる場所で、人々は自分の生を全うできるようになってきていますが、核兵器の存在だけでなく気候変動・新興感染症といった人類の活動によって自然と人間のバランスが大きく崩れ、人類の生存そのものが脅かされています。私たちは、自らが破滅しない世界を目指すことが、人間の安全保障の究極のメッセージです。そして、東洋、グローバルサウスは、国家同士が争うヨーロッパの戦争を乗りこえて、平和の発信者になれるのかどうかが問われているのです。

 

●国際公共財としての国際法と宗教:ロシアのウクライナ侵略への諸国家の対応とビーグル海峡危機におけるローマ教皇庁の仲介をめぐって

(中谷和弘 東京大学大学院教授)

ウクライナ危機のなかで、日々多数の人の殺傷が生じています。そうした状況で停戦と和平は非常に重要です。それは、両国が渋々でも合意できる内容でなければなりません。不正義の仲介は不十分でありますが、誰が仲介者として適任かということも非常に重要な問題です。「国際社会における法の支配」を確立することは、安定した国際社会の維持のために不可欠であり、この意味で国際法は国際公共財になっています。そして、ビーグル海峡危機におけるローマ教皇庁の仲介が示すように、宗教は国際公共財として機能する重要なソフトパワーであり、今後注目される力の一つです。

 

発表後には、パネルディスカッションを行い、登壇した4人がそれぞれの発表へコメントと質問を寄せた。また、参加者との質疑も活発に行われた。

 

2日目(5月28日)には研究発表大会(Zoomにて実施)として、以下の発表が行われた。

 

鳩摩羅什訳経論における固有名詞(前川健一 研究員)

・自分自身を規範的な社会文化的影響よりも「大我」と認識することの仏教(フィスカーネルセン・アネメッテ 委嘱研究員)

・日本の福祉社会における長期的リスクとレジリエンスの視座(宮城孝 委嘱研究員)

・枢軸時代の宗教発祥と社会の関係の一考察、「自己―社会―環境」この3つの範疇の関係の研究について(その2)(光國光七郎 委嘱研究員)

・道徳から動徳へ(大久保俊輝 委嘱研究員)

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