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第34回 学術大会(同志社大学良心学研究センターとの共同シンポジウム)

 

 

(左から、同志社大学良心学研究センターの小原克博センター長、中村信博研究員、東洋哲学研究所の桐ケ谷章所長、石神豊主任研究員、松岡幹夫研究員)

 

 

第34回学術大会が3月16、17日に開催された(会場:16日=創価大学/17日=東洋哲学研究所)。

 

研究所の学術大会は、国内外の研究員・委嘱研究員が集い、法華経研究をはじめ、宗教間・文明間対話、平和と人権、環境問題などの課題克服の研究成果を発表する機会であり、それぞれの専門・研究分野を踏まえたテーマで発表を行った。

 

第34回学術大会では、共同シンポジウムを実施した。シンポジウムの統一テーマは、「地球文明と宗教の役割――平和と幸福観をめぐって」。2019年は、創立者・池田SGI会長と対談集『21 世紀への対話』を編んだアーノルド・トインビーの生誕130 周年にあたる。両者の語らいの一つの帰結として、SGI会長は、全人類的な「地球文明」の創出に言及するとともに、未来の「地球文明」における宗教の役割について、「宗教は、人類心を涵養し、善心を強化し、倫理性・精神性を高め、深める〝主体的役割〟を担うことを期待されている」と語っている。トインビーは「新しい文明を生み出し、それを支えていくべき未来の宗教というものは、人類の生存をいま深刻に脅かしている諸悪と対決し、これらを克服する力を、人類に与えるものでなければならない」と述べている。東洋哲学研究所では、この語らいの中から、21 世紀、そして22 世紀への展望を、どのように理解し、具体的実践として展開していくかについて、研究活動を行ってきた。

 

こうした点を踏まえ、東洋哲学研究所では近年、生命倫理、経済倫理などをテーマに、宗教の在り方を探求してきた。そして、これまでの蓄積をさらに一歩深めるべく、宗教の役割について、その平和観・幸福観をめぐるシンポジウムの開催を企画した。

※シンポジウムの詳細は「東洋学術研究」に掲載。

 

この企画は、同志社大学良心学研究センターとの共同開催となった。同センターの小原克博センター長はこれまで、2002年と2017年にそれぞれ大阪において開催した公開講演会で「キリスト教と女性」「キリスト教と生命倫理」について発表を行い、東洋哲学研究所と交流を続けてきた。共同シンポジウムでは、仏教とキリスト教による、より積極的な宗教間対話の場の構築を目指すことで実施することとなった。

 

シンポジウムでは、桐ケ谷所長の挨拶の後、それぞれの機関から2名ずつが登壇し、以下の発表を行った。

 

第1セッション〈宗教と幸福〉

●「幸福論の復権と創価思想」(石神豊 東洋哲学研究所主任研究員)

現代における幸福論の必要について、その背景と意義とを考えること、そして創価思想がそうした現代にふさわしい幸福論かどうかを提起したいと思います。戦争へと向かう時代は幸福を考えさせない、消し去ろうとする傾向をもっています。教育界にあっても知識に偏重しがちであり、幸福の姿が見えない現状があります。

創価学会・牧口常三郎初代会長の「創価教育学」は、幸福を教育の中心に置こうとするものであり、その中核が「価値論」で「利」という生活上の具体的・経験的な価値を挙げられています。この「価値論」とともに、仏法の教義である「十界論」「仏性論」を通して、創価思想の幸福論としての観点から検討する必要があります。仏教は本来、人間の苦を除き喜びを与える宗教運動です。仏教を源とした創価思想は、仏教の粋を受け継ぎ、現代に実践的に展開するところの根を深くもった幸福論といえると考えます。

 

●「キリスト教における幸福観と超越的思考―教育的営為のなかで―」(中村信博 同志社大学良心学研究センター研究員)

宗教は「生」のあらゆる現場における充足感を幸福の指標とします。近代日本社会においてキリスト教は狭義での布教活動のみならず、日本社会の改善と改革に大きな足跡を残しました。キリスト教各教派は教会形成のほかに、医療と福祉そして教育に努力を傾けました。キリスト教は教育の普及によって社会的幸福を達成しようとしたのです。キリスト教系学校教育は信者の拡大に直接寄与したわけではありませんでしたが、多くの生徒、学生たちにキリスト教的幸福観とそれを測る基準を教えたと考えることができます。

旧約聖書(ヘブライ語)は、現実の充足と安寧、豊作が保証されることを幸福の指標としています。新約聖書はイエスの磔(十字架)刑と復活によって、現実世界とは異なる価値観を提示しているように見えます。高度に世俗化した現代社会において超越的対話者(神)を前提にした幸福観は、どのようにして可能となるのかを考えていく必要があります。

 

第2セッション〈宗教と平和〉

●「仏教者の戦時対応に対する解釈の可能性――創価教育学会の事例に即して」(松岡幹夫 研究員)

第二次世界大戦後、戦争責任をめぐる議論において、宗教者の戦争協力が問題になり、日本の仏教界では、教団の指導者たちの大半が日本の帝国主義戦争の思想的な加担者となった点が批判されてきました。その中で、創価学会の牧口常三郎初代会長が軍部政府の思想統制に異を唱え、弾圧を受けて獄死したことは一際異彩を放っている事実です。

この牧口会長の戦時下抵抗に対し「あれは宗教上の抵抗であって反戦運動とは言えない」とする意見が以前から存在していました。しかし、宗教者の反戦行動には記録や言説の表に現れにくい面があります。宗教的信念に基づく反戦は、政治的な戦争反対とは様相を異にするのです。それは、資料的根拠を重視する近代的な歴史解釈では捉え切れないのです。

牧口会長の仏教的文献・資料の理解を可能にする正当な先入見は、日蓮仏法の伝統の中に立つことで形成されます。それによって「見えない」反戦という現代的な意義を見出す理解が可能になるのです。牧口会長は、宇宙の慈悲を体現した「仏の使」であり、日蓮仏法の平和原理(一念三千)によって現前する戦争の終結を願い、迫害の中で殉教した永遠の師として映し出されるのです。

 

●「宗教が平和に貢献するための課題──良心学と統合的平和の視点から」(小原克博 良心学研究センター・センター長)

次世代の平和観を構築するために必要な、宗教にとっての課題を考えたいと思います。その際に、宗教とその隣接領域との関係の重要性に光を当てるために、同志社大学が掲げる「良心学」の知見を用います。

キリスト教の歴史において、異なる宗教・文化的背景を持った信仰共同体が大きな緊張や対立をはらみながらも、いかにして共通基盤を見出してきたのか、また平和観がどのように変遷してきたのかを振り返った時、近代日本においては、平和主義(非戦論)や信教の自由が、国家秩序のもとに制限され、抑圧された、いくつもの事例を見ることができます。

従来の宗教間対話に一定の意義があることは言うまでもありませんが、宗教的な共存可能条件と、政治的・教育的な条件を組み合わせる努力はまだ十分とは言えません。政教分離は、異なる価値観を共存させる近代的な仕組みですが、厳格な分離が必ずしも問題解決をもたらさないという、現在、西洋社会が直面している困難を、日本社会も無視することはできないと思います。良心学は、宗教的価値と世俗的価値を架橋することを目指してきました。宗教的世界観と世俗的世界観を統合的に見る視点が求められると同時に、人間中心主義や現在世代中心主義を前提とする世俗社会において欠如している視点を、宗教は積極的に提示していく必要があります。その一例として、現在世代の人間の間における平和だけでなく、世代を超えた平和や、自然・人間・人工物(人工知能を含む)の間の平和の必要があると考えるのです。

 

発表後には、パネルディスカッションを行い、登壇した4人がそれぞれの発表へ質問とコメントを寄せた。その中で小原センター長は「信仰は絶対的という信念を持つことと、それによって自分を絶対視することは異なります。今、求められるのは世俗と宗教の価値を架橋することです。宗教を世俗で分かる言葉に変換する必要があるのです。“こんな大事な価値がなぜ多くの人に伝わらないのか”という葛藤が、宗教を活性化させるのだと考えます」と述べ、参加者との質疑も活発に行われた。

 

また、シンポジウムに先立つ16日午前、研究発表大会として、以下の発表が行われた。

 

・牧口創設の通信制高等女学校消滅の謎(上藤和之 委嘱研究員)

・C.G.Jung's Theory of the Unconscious and its Impact on the Philosophy of Education(バーバラ・ドリンク 海外研究員)

・Migration Challenges: Building Networks Of Cultural Collaboration To Support Non-Violent Bottom-Up Solution To The Conflicts Looming On The Horizon(フランチェスカ・コッラオ 海外研究員)

・SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の現状と課題(大島京子 研究員)

 

17日の研究発表大会では、以下の発表が行われた。

・三観と三諦(前川健一 研究員)

・いじめ予防プログラム ドイツ国の取組から(大久保俊輝 委嘱研究員)

・後漢書西域伝の閻膏珍は誰か―クシャン朝カニシカ王の父か祖父か(吉池孝一 委嘱研究員)

・漢魏交替期の気候・災害と政治史に関する初歩的考察(満田剛 委嘱研究員)

・野村萬斎という戦略―古典芸能の現在と未来(藤岡道子 委嘱研究員)

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