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第30回 学術大会

 

2014年度の掉尾となる東洋哲学研究所の第30回学術大会が3月21、22日に開催された(会場:21日、創価大学/22日、東洋哲学研究所)。

 

学術大会は、第1回の開催以来、国内外の研究員・委嘱研究員らが研究成果を発表する場として、法華経研究をはじめ、宗教間・文明間対話、平和と人権、環境など「地球文明の創出」を目的として、毎年1回行われてきた。今回は、第30回の節目を刻む大会として、マレーシアのマラヤ大学よりライハナ・アブドゥーラ博士(人文学研究クラスタ副院長)、ファリダ・ノール博士(文明間対話センター所長)を招聘。21日午後に、「文明間対話シンポジウム――仏教とイスラームの相互理解に向けて」を行った。

 

※シンポジウムの詳細は「東洋学術研究」2015年第2号に掲載

 

東洋哲学研究所は2012年10月、マラヤ大学文明間対センターとイスラーム文化圏初となる共同シンポジウム「文明間対話――平和・共生・持続可能性」をマレーシア・クアラルンプールの同大学で実施。マハティール元首相の特別講演をはじめ、研究員による論考の発表がなされた。さらに、両機関の学術交流協定が締結された。

2014年2月には、「法華経――平和と共生のメッセージ」展が、クアラルンプールのマレーシア創価学会総合文化センターで開催された。会期中、東洋哲学研究所と文明間対話センター、マレーシア首相府国家統一・統合局、マレーシア創価学会の共催による「平和と共生――イスラームと仏教の対話」会議を行った。こうした交流を重ね、仏教とイスラームの相互理解を推進してきた両機関によるシンポジウムでは、ライハナ博士が「イスラームにおける男女の平等」、ファリダ博士が「法華経に説かれる共生」をテーマに、ムスリムの立場から仏教を見た論考の発表を行った。

両博士は、大要、以下のような講演を行った。

 

                    

<ライハナ・アブドゥーラ博士>

仏教において男女平等の思想が説かれているように、イスラームにおいても聖典『クルアーン』に説かれており、男女の間に差別はありません。特に教育においては、知識の追求を義務として、女性も学んでいくことを教えています。しかし、イスラーム圏では、これまで、男性に大きな権利があると見られ、女性が劣っているという風潮があります。未だに多くの国で、女性は経済的・社会的弱者においやられています。

現代の国際社会では、女性への差別を撤廃し、基本的な人権と経済的、社会的立場を保障することが求められています。今、この流れは、マレーシアにおけるイスラーム家族法に反映され、人々に適用され始めています。私は、クルアーンに基づいた男女平等を、社会に定着させ、差別をなくしていくことを、さらに深く考えていく決意です。

 

 

<ファリダ・ノール博士>

私は言語学を専門としているため、仏教とイスラームとの対話のテーマのもとで、バートン・ワトソン博士が翻訳した「法華経」薬草喩品を通して、お話をしたいと思います。法華経は、大乗仏教の中で最も重要な経典として、多くの人々に影響を与えてきた教えです。私が注目をした薬草喩品のなかでは、反復表現の多用や、直喩・比喩、また誇張表現を使用するとともに、色彩を与える形容詞や、物語性を持った話の進め方をしています。

私はいかなる性別や、いかなる存在であっても、その人を排除せずに進むことが共存の意味するものであると思います。そういった意味で、今回のシンポジウムの開催は、私にとって非常に実験的な試みであるのです。

 

シンポジウムでは、このほか、マラヤ大学医学部副学部長で東洋哲学研究所海外研究員のボイ・チョンメイン博士による「医学におけるイスラームと仏教間の対話」、栗原淑江主任研究員による「仏教における男女平等観――ブッダの時代」、山崎逹也研究員による「イスラーム哲学における調和と共生」の発表と質疑応答が行われた。

 

また、シンポジウムに先立つ21日午前に、研究発表大会として、以下の発表が行われた。

・「宗教教団の信仰継承の現代的課題」(平良直研究員)

・「ニーチェ的生の『歴史的実存性』と牧口価値論」(尾熊治郎委嘱研究員)

・「共存から紛争へ―オスマン帝国における共存形態の変容と崩壊―」(岩木秀樹委嘱研究員)

・「地域社会における善行――イスラームと仏教の視点の比較分析」(フランチェスカ・コッラオ海外研究員)

 

22日には、以下の発表が行われた。

・「能狂言を描いた近世の画家たち―――狂言の役者と演技はどう描かれたか」(藤岡道子委嘱研究員)

・「『十如是』考」(前川健一研究員)
・「新たな宇宙論の展開を目指して――中論からの考察」(青木宏委嘱研究員)

・「日蓮の依正不二観と森の保全試論」(平塚彰委嘱研究員、若江賢三委嘱研究員)

・「いじめ連鎖防止と公平観」(戸田有一委嘱研究員)

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