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第29回 学術大会

 

 東洋哲学研究所では、第29回学術大会を、3月22、23日の両日、「人類の未来と仏教の可能性」をテーマに開催した(会場:22日、創価大学/23日、東洋哲学研究所)。

 

22日には、同テーマでのシンポジウムが開かれ、イギリス・オックスフォード仏教学研究所のリチャード・ゴンブリッチ博士による基調講演「人類の未来に対する仏教の可能性」が行われた。博士は「仏教が平和のために何をできるか」という課題に論及し、だれもが積極的に慈愛の行動をするというのは高貴な理想ではあるが、むしろ「互いを殺したり憎んだりするのを止める」「互いの過ちを正そうという偏執を捨て、その代わりに、個々人が自分自身の心と行いを浄化することに集中できるよう、仏教が人々を説得する」というのが実際的な目標であろうと述べ、それができるならば、仏教には人類の存続に寄与する可能性があると考えると語った。

 

またシンポジウムでは、同研究所研究員のスレン・ラーガヴァン博士が「仏教の(脱)民族化――グローバル化した世界秩序のために」と題して特別講演を行った。講演で博士は「仏教が代替的な世界観となり、国家や民族の境界を超えた喫緊の地球規模の問題に対処する実際的モデルとなるために、仏教徒の間で脱民族的アイデンティティが築かれることが必要である」と論じた。

シンポジウムでは、このほか大西克明研究員による「多文化主義・ポスト世俗主義と仏教的世界観」、松岡幹夫研究員による「仏教は絶対平和主義か」の発表ならびに質疑応答があった。


リチャード・フランシス・ゴンブリッチ(Richard Gombrich)博士

1937年7月17日生まれ。

学位:1961年 東洋学(サンスクリット語・パーリ語)学士号取得 オックスフォード大学/1963年 文学修士号取得 ハーバード大学(アメリカ)/1970年 哲学博士号取得 オックスフォード大学(イギリス)

栄誉称号:1990年 会員 ヨーロッパ学士院/1991年 名誉文学博士号 カルヤーニ大学(インド)/1993年 「S・C・チャクラボルティー」賞受賞 アジア協会(コルカタ)/1994年 「スリランカ・ランジャーナ」国民栄誉賞受賞(国家表彰)/1996年 名誉教育学博士号 モンフォート大学(イギリス)/1997年  大学賞受賞 ワルシャワ大学(ポーランド)/1997年  名誉文学博士号取得 ラシュトゥリヤ・サンスクリット大学/2008年 名誉終身会員 国際仏教学会

略歴:1965-1976年 オックスフォード大学 サンスクリット語・パーリ語 講師/1966-1976年 オックスフォード大学 ウォルフソン・カレッジ 研究員/1976-2004年 オックスフォード大学 サンスクリット 教授/オックスフォード大学 ベリオール・カレッジ 特別研究員/1977年-  オックスフォード大学 ウォルフソン・カレッジ 名誉研究員/1981-1994年 パーリ文献協会 名誉幹事・財務長/1981-1994年 パーリ文献協会 会長・財務長/1994-2002年 パーリ文献協会 会長/1996-2002年 パーリ文献協会紀要 共編者/2002年-   オックスフォード仏教学研究所 アカデミック・ディレクター2004年-  オックスフォード大学 名誉教授/ベリオール・カレッジ 名誉研究員/2008年-  オックスフォード仏教学研究所 創立者、所長/2011年-    オックスフォード大学仏教学研究所紀要 編集者

邦訳のある『インド・スリランカ上座仏教史――テーラワーダの社会』(春秋社)、『スリランカの仏教』(共著/法蔵館)をはじめ20冊の著作と120本の論文がある。


スレン・ラーガヴァン博士(Suren Rāghavan)博士

学位:2012年 政治経済学博士号取得 ケント大学(イギリス)

博士論文は「連邦主義との闘争による仏法の擁護――シンハラ人僧団の宗教的民族主義とスリランカでの平和維持活動」

現職:サン=ポール・ドタワ大学(カナダ)客員教授/オックスフォード仏教学研究所研究員/スリランカ社会科学協会 政治・公共政策部 政治経済学研究員

1996年から2000年の間、スリランカ政府の調節官を務め、平和構築に貢献した。スリランカの首相から、セカンドトラック(政策決定に影響をもつ有識者による民間レベルの和平交渉)のチームの一員に任命され、スリランカで武装闘争を行っていたタミル人のテロ組織「タミルタイガー」と直接平和交渉もした。また、平和協力本部の一員として、仏教僧やサンガ(僧団)とスリランカ政府との関係を調節することにも貢献した。

著書:Buddhist Monks and the Politics of Lanka’s Civil War   (2014年8月発刊予定)


 また、シンポジウムに先立ち、同日、以下の発表が行われた。

・イブン・シーナーにおける能動知性の問題―イスラーム哲学における魂論の一側面―」(山崎達也研究員)

・安然撰『即身成仏義私記』における生身得忍菩薩(土倉宏委嘱研究員)

・日蓮宗における本迹論(ベルトラン・ロシニョール海外研究員)

・The Relevance of Buddhism in Building a Positive Intercultural Dialogue(フランチェスカ・コッラオ海外研究員)

 

 さらに23日には、以下の発表が行われた。

・「報酬・責任の分配における幼児の公平判断―返報性・巡報性・ケアの考慮―」

 (戸田有一委嘱研究員)

・東京国立博物館蔵「能狂言絵巻」を解読する(藤岡道子委嘱研究員)

・「山川草木の思想」 と 水環境保全-音による水質改善-(平塚彰・若江賢三委嘱研究員)

・新しい地球文明と生命価値経済システム(八巻節夫委嘱研究員)

・宇宙は膨張しているか? 物理的かつ中論からの考察(青木宏委嘱研究員) 

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