第4回連続公開講演会「地球的危機の『挑戦』と宗教・文明の『応戦』――パンデミックを契機として」

◆講師:糸井川 修氏(愛知学院大学教授)

◆テーマ:戦争のない世界に向けて――ベルタ・フォン・ズットナーの文学と平和運動

◆開催日:2022年12月10日

◆方式:YouTubeライブ配信(オンライン)

連続公開講演会「地球的危機の『挑戦』と宗教・文明の『応戦』――パンデミックを契機として」開催趣旨

講演内容は「東洋学術研究」に掲載予定

 

糸井川氏は、信州大学人文学部の後、名古屋大学大学院文学研究科独文学専攻博士課程単位取得満期退学。文学修士。愛知学院大学では講師、助教授、准教授を歴任し、現在教授を務めている。研究領域は、ドイツ文学、オーストリア文学で、ウィーン大学の在外研究から講演のテーマであるズットナー研究を推進している。女性初のノーベル平和賞受賞者であり、『武器を捨てよ!』の作者であるズットナーの研究を通して、平和・反戦などを考える機会を出版や展示会・講演会などの多くの場面で提供し続けている。

 

講演では、ズットナーがあらゆる戦争の阻止に向けて、自らの小説のタイトルである『武器を捨てよ!』という三語で叫び続けた事実に言及。その明快すぎる表現を執拗に繰り返す彼女を、人々が「平和のベルタ」と呼び始めたことに触れ、「そこには、皮肉が込められていました。つまり、『戦争の行われていない平和な時代に、平和を叫んでいる、ベルタ』というニュアンスでしょうか」と述べた。そして、平和学者ガルトゥングが提起した概念を用いて、「ズットナーの平和観は、戦争が行われていない状態を平和とする『消極的平和』ではなく、抑圧や搾取、人権侵害など紛争の原因にもなる『構造的暴力』をも無くそうとした『積極的平和』に近いものだったと言えます」とした。

 

さらに、世界はズットナーの思想と行動の真意を、彼女が亡くなった後に勃発した第1次世界大戦を経て知ったと述べつつ、「平和に対する理解も大きく変わった今、彼女への称賛の意味を込めて『平和のベルタ』と呼んでもよいのではないかと思っています。戦争の精神を糾弾する彼女の運動は、まさに『平和を望むならば、平和の準備をせよ』という、戦争の文化から平和の文化への転換を促すものだったと言えるのです」と語った。

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