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第2回連続公開講演会「信仰と理性――コロナ禍のなかで」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆講師:佐藤 弘夫氏(東洋哲学研究所委嘱研究員、東北大学教授)
◆開催日:2020年10月17日
◆方式:YouTubeライブ配信(オンライン)

連続公開講演会「信仰と理性――コロナ禍のなかで」開催趣旨

講演内容は「東洋学術研究」に掲載予定

 

佐藤弘夫氏は、東北大学大学院で文学博士号を取得。日本思想史、神仏習合、鎌倉仏教、国家と宗教、死生観などを専門・研究テーマとする。東洋哲学研究所では委嘱研究員として研究を進め、「法華思想の研究」「日蓮仏教の文献学的、思想的研究」プロジェクトに所属。市民講座での講演や「新たな日本思想史像を求めて」「中世日本仏教における信徒の意義」などをテーマにした論考の発表などを行ってきた。

 

講演では専門の見地から、人間だけでなく、その生活を取り巻く自然にまで視野を広げつつ、日本列島で育まれてきた思想と文化が、人類の直面する諸課題の解決に向けてどう貢献できるのかという点について、大要、以下のような発表を行った。

 

氏は、「コロナのような感染症は、かつて日本では疫病神と呼ばれ、得体のしれない存在が引き起こすものだとされました。そして、人間を超越した力によってもたらされると信じられていました。近代以前は、いつ死ぬか分からない大量死の時代でありました。だからこそ、生と死を貫くストーリーが必要となったのです。死が終わりではなく、次の生のための移行期であると考えられてきたのです。そういう世界観の担い手が、人間を超越した力を持った存在であったのです」と語った。

 

また、「近代化は、世界から人間以外の存在を放逐し、コロナなど疫病を放逐すべき対象としました。それによって、この世とあの世の媒介者を失い、生と死を貫くストーリーが消失しました。科学的知見の発達によってコロナは撲滅すべき対象となりましたが、本当に撲滅が可能なのか。人は死から逃れることはできないという事実から考えていくことが重要だと思います」と述べるとともに、「人は生だけでは完結しません。今は、死を排除しています。人類の歴史を見た時、必ず生と死をつなぐストーリーが必要です。仏教は、この生と死について、最も良質な思想を提供してきたと思います。これからもう一度、きちんと着目していいものです。過去の思想・宗教とするのではなく、どうやって宗教の本質をとらえていくのかが求められているのです」と望んだ。

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