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連続公開講演会「生命倫理と宗教」

◆講師:小原 克博氏(同志社大学教授、同大学良心学研究センター長)
◆開催日:2017年11月14日
◆会場:梅田スカイビル(大阪市・北区)


講演内容は「東洋学術研究」に掲載




 小原氏は、キリスト教思想、宗教倫理学、一神教研究を専門領域としている。同志社大学神学部を経て、同大学大学院で博士号を取得。同志社大学一神教学際研究センター長、京都・宗教系大学院連合議長などを歴任してきた。東洋哲学研究所では2001年11月に開催した公開講演会に氏を招聘。「キリスト教世界の女性たち」をテーマとした発表を行って以来、交流を結んできた。

 講演では、生命倫理の基本概念を確認するとともに、アメリカやカトリック世界における中絶や人の始まりに関する議論を紹介。そうした現状を通して、「倫理とは、他者のことを考える能力であり、共感する力であると思います。通常は、自分のことだけを考えるだけで精一杯です。ですから、そうしたなかで倫理は、他者への関心を持つという社会的な概念です」と述べた。

 また、キリスト教をベースとした点について、「生命に関わる問題について、キリスト教は、多くの議論が蓄積され、その例を世界的に見ることができるからです。私はいざという時の養いが信仰であると思います。そういった信仰が、善悪の判断をする上で必要であると考えます。皆さんもそういった力をお持ちであると思います」と論じた。
 

 そして、科学技術発達によって、画一的な価値で善悪や生命倫理の判断をすることが難しい時代になっていることに言及し、「多様な価値観を尊重していかなければなりません。ですから、選択可能な事柄の中から、最善を選択していくことを示す流れとなっています。これからは伝統的・つながりの中で見る日本的な命と、西洋的な個として見る命の視点のなかで、双方を見ていくことが大事になってきます」と語った。

 最後に、命を授かりものではなく、作り出すもの・選び出すものと考えているのが現代の生命観になっていると述べ、「制御したり、遺伝的選択をしたり、教育を施すという変える愛ではなく、授かりものとしての命であり、受け入れる愛というのが大切なのでないでしょうか。そうした命を正しく評価する価値観・倫理を私たちの時代の中心に据えていく必要があると思います」と望んだ。

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