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連続公開講演会「生命倫理と宗教」

◆講師:青柳 かおる氏(新潟大学人文学部准教授)
◆開催日:2017年10月31日
◆会場:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京・新宿区)


講演内容は「東洋学術研究」に掲載



 青柳氏は、宗教学、イスラーム思想史が専門領域である。東京外国語大学でアラビア語を修めた後、東京大学大学院で博士号を取得。同大学院イスラーム学講座助教、日本学術振興会特別研究員を歴任してきた。東洋哲学研究所では、2010年にイスラームにおける婚姻論、2012年に神秘主義の思想と実践についての2回の講演会に登壇。2017年4月には、生命倫理に関する研究会を行うなど3回に渡って交流を続けてきた。


 講演会では、生命の尊厳に関わるような医療技術については社会的な合意形成が必要であり、生命倫理の問題意識は、1960年代の後半から70年代にかけて生じてきたものであると語った。青柳氏は、生命倫理とイスラームの概説を述べつつ、受精や中絶、生殖補助医療、終末医療などを踏まえて発表を行った。

 そして、イスラームが、クルアーンに基づき、世界で10億人を超える人々が信じる宗教であり、その根本は、クルアーンとムハンマドの言行録をまとめたハディースであると言及。カトリックとは異なり、教義についての公会議を行わず、そのため、クルアーンとハディースを解釈する法学者や時代・地域によって異なる解釈が生まれることを通して、イスラームには、生命倫理についても多数派と少数派それぞれの見解が存在する事実を紹介。そうした歴史によって生じたイスラームの多様性を述べた。

 さらに、生命倫理の問題を論じる上で重要となるイスラームにおける死を論じ、イスラム教徒にとって死とは恐れるものではなく、あくまでも通過点であると考え、それを乗り越えていくことを教えていると語った。そして、皆がムハンマドを生き方のモデルとして捉え、イスラームの教えに基づいていくことが「良き生」であるとしていると強調した。

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