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『地球環境と仏教――大乗仏教の挑戦3』

東洋哲学研究所編

喫緊の課題「地球環境問題」を仏教はどう見るのか、いかなる貢献ができるのか、具体的には何をすればよいのか――東洋哲学研究所の研究員・委嘱研究員が、それぞれの専門分野を生かして考察した「仏教環境論」の論文集。「大乗仏教の挑戦」シリーズの第3弾です。

 

2008年9月発行
※在庫切れ

 


主な内容

○地球環境との共生
――菩薩としてのライフスタイル
川田洋一
○大乗仏教における環境倫理
――持戒と智慧の意義
山本修一
○地球環境時代と生命系経済学 八巻節夫
○〝東洋的世界観〟が地球を、そして人類を救う
――ホモエコノミクスからホモエンバイロンメンティクスへ
平塚彰
○『善の研究』とディープエコロジー
――宇宙論的ヒューマニズムの探求
松岡幹夫
○日本人の自然観
――神道の自然観と仏教の自然観
福井朗子

 

 東洋哲学研究所の川田洋一所長は、同書に寄せた「序文」のなかで、掲載された論文を次のように紹介しています。

 

6本の論文のうち、私の「地球環境との共生――菩薩としてのライフスタイル」は、地球生態系との共生のためには新しいライフスタイルが必要であるとの観点から、大乗仏教が教える「慈悲と報恩の思想」、生きとし生けるものを保護し、生態系に創造的調和をもたらすべき人類の使命、未来に登場する万物に貢献する「世代間倫理」に触れています。そして不殺生(ふせっしょう)戒をはじめとする仏教の戒が、知足(ちそく)・非暴力・慈悲など人類が体現すべき「地球倫理」の骨格をなすことを論じ、「菩薩としてのライフスタイル」による共生・共存の「地球文明」の創出を展望しています。    

 

山本修一氏の「大乗仏教における環境倫理――持戒(じかい)と智慧の意義」は、〝生物に関わる環境問題〟の種々相を紹介しながら、動物や植物、微生物まで含めた生命をどう扱うべきかが学問と倫理の課題になっているとし、仏教の生命観から見た行動規範を考察しています。その際、仏教は原理的には「あらゆる生命の平等性」を基礎としつつも、人間生命の優位を認めているとしています。その上で、仏教の不殺生(ふせっしょう)戒や不偸盗(ふちゅぅとう)戒などが、「森林破壊」「生態系の保護管理」「農薬使用」「肉食」「動物実験」など現実の環境問題において、いかなる立場を支持するかを具体的に検討しています。

 

八巻節夫氏の「地球環境時代と生命系経済学」は、市場経済システムの欠陥として「エコロジー・システムの度外視(どがいし)」「物的豊かさが人間の幸福を増すといった浅薄な幸福観」を指摘し、それに代わるものとして「生命価値」を高め再生産するシステムの構築を提唱しています。生命価値とは、生命を活性化させ、生きるよろこびをもたらす価値で、創造的行為や他者への奉仕などから生まれる満足などを含むものであり、「本能的・身体的欲望」から「精神的・本源的欲望」へと文明の基調をパラダイムシフトすることで、持続可能な経済システムが実現されると論じています。

 

平塚彰氏の「〝東洋的世界観〟が地球を、そして人類を救う――ホモエコノミクスからホモエンバイロンメンティクスへ」は、環境問題への現在の処方箋が「ホモエコノミクス(合理的経済人)」的思考に基づいているとし、その限界を指摘。それに代わる思考様式の必要を主張しています。具体的には①政策判断としての予防原則②環境と「環世界」③人文学の復興④ガイア仮説⑤アニミズム的思考の復権に触れ「これらを人間の直観力によって統合して再解釈(分析・理論化)する新しい学問分野」である「ホモエンバイロンメンティクス(環境人文学)」への期待を述べています。さらに「仏教的環境論」の可能性に論及しています。

 

松岡幹夫氏の「『善の研究』とディープエコロジー――宇宙論的ヒューマニズムの探求」は、西田幾多郎の自然観とディープエコロジーを比較し、「自己実現」を説くなどの共通点をもつものの、後者の「生命中心主義的平等」が人間優先主義と衝突するのに対して、前者は「人間中心主義と自然中心主義の不毛な二極対立」を超える思想であるとしています。その上で、後期の西田哲学は没我(ぼつが)的「絶対無」を志向して、いわば倫理の立場を踏み越えていったと批判し、「万物調和のための人間の主体的なリーダーシップ」を説く池田SGI会長の環境思想の意義を考察しています。

 

福井朗子氏の「日本人の自然観――神道の自然観と仏教の自然観」は、「人間と自然は一体とみなす伝統的な自然観」が、なぜ公害や自然破壊に有効性をもたなかったのかと疑問を提示して、伝統的自然観の正負の両面を公正に検討する必要を指摘。その一環として、神道と仏教の自然観と、それらの社会への受容の歴史を概観しています。その中で仏教思想の負の面の例として〝仏国土形成のための自然開発は、自然物自身が仏に命を捧(ささ)げることであると正当化された〟〝悪人往生(おうじょう)説が、不殺生戒を犯すことをも正当化した〟などの論点を紹介。これらの弱点を乗り越えるには、宗教的実践の中に環境問題解決を目標として定めて行動すること、また異なる思想の人々と宗教的教義とは切り離したかたちで共通理解を得ることなどが必要である等と論じています。

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