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『平和を目指す仏教――大乗仏教の挑戦2』

東洋哲学研究所編

『大乗仏教の挑戦――人類的課題へ向けて』

「仏教のめざす平和は、『心の平和』を基軸としながらも『社会の平和』、そして『生態系の平和』の創出をも意味する」――東洋哲学研究所・川田洋一所長の「序文」の1節です。本書は、創価学会の戸田城聖第2代会長による「原水爆禁止宣言」(1957年)50周年を記念する論文集であり、各分野の研究者が、今なお戦火のたえない地球の現実を見つめつつ、「平和のために仏教は何ができるのか」をめぐる思索をまとめたものです。
2007年9月発行
※在庫切れ



主な内容

法華経に見る平和思想 川田洋一
ガンジーの思想と大乗仏教の接点 塩津徹
『法華経』の包括主義と宗教的寛容 菅野博史
日蓮の平和思想  小林正博
牧口常三郎と反戦 松岡幹夫
SGIの平和理念と日蓮仏教 前川健一

東洋哲学研究所の川田洋一所長は、同書に寄せた「序文」のなかで、掲載された論文を次のように紹介しています。


      *                    *                      *


論考のうち、私の「法華経に見る平和思想」は、法華経に説く「火宅」の様相を示す現代世界において、「万人の成仏」「永遠なる仏」「菩薩道の実践」を示す法華経が、いかなる平和思想を提供するのかを考察したものです。そのさい、求められているのは「直接的暴力」の克服とともに、その基盤にある「構造的暴力」の解決であり、そのための「人間の安全保障」「人間開発」「人権運動」などの理念が法華経の平和思想と共通していることや、21世紀における『『暴力』に対する『非暴力』の戦い」(池田SGI会長)を担うべき「地球市民」の条件などについて論じています。

塩津徹氏の「ガンジーの思想と大乗仏教の接点」は、ガンジー思想の特徴を「柔軟性」「権力からの距離」「人間としての誇り」「社会変革」「非暴力」の5点からとらえ、大乗仏教との共通点を論じています。たとえば社会変革について、大きな乗り物を意味する「大乗」の語には「菩薩行を中心とした民衆救済の運動の意味が込められている」とし、社会変革への実践を重視していること、しかも具体的な制度の構築よりも、むしろ「人間としての誇りを持ち、権力に媚びず、他人の痛みに同苦する人権感覚」の社会的形成に重点をおいている点などにガンジーとの接点を見出しています。

菅野博史氏の「『法華経』の包括主義と宗教的寛容」は、平和のための大きな課題である「宗教的寛容」について、自宗教と同じ価値を他宗教に認める多元主義、他宗教を自宗教の準備段階として部分的に承認する包括主義、他宗教の存在を認めない排他主義に分類した場合、法華経は基本的には包括主義の立場であろうと主張しています。そのさい、法華経には諸仏と諸教を「統合」する面と、一切を生かす「多様性の尊重」の面があることなどが分析され、最後に平和のための宗教間対話において包括主義が実効性をもちうることが論じられています。

小林正博氏の「日蓮の平和思想」では、日蓮大聖人の生きた時代は天災・人災が頻発する過酷な時代相であったとし、そのため為政者・武士・庶民がそれぞれ「安泰」「安堵」「安心」を求める《安穏の精神構造》が社会の底流にあり、それは「戦争がない」という意味での「平和」よりも幅の広い、中世の人々の心の叫びであったと指摘しています。そして「立正安国論」は、こうした安穏の精神構造を直接的な体験を通して把握し、安穏を共通のテーマとして為政者に迫った対話の書であると論じています。

松岡幹夫氏の「牧口常三郎と反戦」は、創価学会の牧口初代会長が戦時中、軍部政府に弾圧されたのは「宗教的理由からであって反戦運動を行ったからではない」という批判的意見に対して、これは牧口会長の思考法を理解していないための誤解であるとし、牧口会長の国家観・戦争観を文献と当時の証言などから綿密に検証しています。そのうえで「牧口が願ったのは、日蓮仏法の〈戦争否定力〉による市民生活の安穏――立正安国――の確立であった。そして彼は、宗教的・教育的・道徳的に『大東亜戦争』に熱烈に反対した」と結論づけています。

前川健一氏の「SGIの平和理念と日蓮仏教」は、SGI運動の特色として①仏教による社会変革②在家者を主体とする③国家主義からの脱却――を挙げ、①が日蓮大聖人の立正安国の思想に淵源をもつこと、②が伝統的仏教教団と大きく異なること、また③については、近代の「日蓮主義」が国家主義的になっていったのと対照的に、創価学会は初代会長以来、国家を超える思想性をもっており、池田SGI会長によって現実に世界的運動になったこと、その根本理念として「人間革命」の思想があったことなどを論じています。

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