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『大乗仏教の挑戦――人類的課題へ向けて』

東洋哲学研究所編

『大乗仏教の挑戦――人類的課題へ向けて』

平和の実現、人権の確立、環境との共生、女性の活躍、生命科学と生命倫理、そして宗教間対話の推進……それらの課題に対して、法華経をはじめとする大乗仏教はどう考えるのでしょうか?何ができるのでしょうか?いかなる智慧を提供するのでしょうか?各分野の研究者が真摯に探究した成果、6論文を収めました。

 

2006年9月刊

※在庫切れ


東洋哲学研究所の川田洋一所長は、同書に寄せた「序文」のなかで、6つの論文を次のように紹介しています。

 

「6つの論文のうち、私の「仏教の平和観」では、仏教者の平和へのアプローチを論じています。すなわち、人間の「貪欲性、暴力性、無明性」などの煩悩が、個人から家族、部族、民族、国家、人類へと広がっている現代の状況を略述した上で、根本的には「煩悩との戦いのなかに、仏教の平和への貢献がある」と主張しています。そして、個人が慈悲にあふれた「心の平和」を確立するとともに、それを基盤にして「人類社会の平和」に、さらには「生態系の平和」にまで貢献していくところに「現代の菩薩道」があるとし、地球的問題群の克服へ挑戦するSGIの実践を紹介しています。

塩津徹氏の「大乗仏教と人権――解釈の方法を中心として」は、人権を成り立たせる理論的基盤を「人間の尊厳」ととらえ、この「人間の尊厳」に仏教思想がどう貢献できるかを探った論考です。ここで筆者は、現代の人権保障の内容と直接関連するものを仏典の個々の文言に求めるのではなく、むしろ現代の問題意識に照らして仏典を「再解釈」し、その文言が伝えようとしている原理・思想を読み取るべきであり、それが仏教を「生きた仏教」として理解することになると主張しています。

菅野博史氏の「『法華経』の現代的意義」では、「宗教聖典が自動的に時代の問題、時代の要求に答えを出してくれるわけではない」として、それぞれの時代の諸問題と格闘する人間が、聖典と真剣に取り組んでこそ、はじめて聖典が語り始めることを強調しています。そして、「私自身は、永遠の法を根本とする生き方、自己の尊厳と他者の尊厳に目覚めることによって、相互尊敬の共生の世界を実現し、この苦しみ多い現実の世界を衆生の遊楽することのできる世界に変えてゆく生き方を『法華経』から学びたいと思う」と結論しています。

栗原淑江氏の「仏教史における女性の問題――日蓮の女人成仏論を中心に」は、日蓮の遺文等を通して、その女性観の特質を探究しています。社会も仏教界も女性差別の傾向を強めていた中世日本において、日蓮は法華経に説かれる女人成仏の教えを強調し、宗教的救い(成仏)において男女は平等であると主張しました。筆者は、日蓮がこのような女性観を形成した背景として、日蓮自身の「母親への報恩の思い」と、「社会的に差別されている弱者への同苦の念」に注目しています。

山本修一氏の「環境思想への仏教の寄与」は、環境問題の克服のためには社会の自然観・環境観の変革が必要であるとの世界的要請を踏まえ、仏教思想はどのような貢献ができるかを探った論考であります。環境問題の原因として、物質的な執着と、それが幸福につながるという誤った固定観念への執着、それらが生む欲望を指摘し、そうした執着を克服し、貪欲を制御する生き方としての「菩薩道」を論じています。

木暮信一氏の「生命科学に対する仏教の視点」は、20世紀後半の分子生物学・脳科学の発展の延長として、21世紀における科学の発展は生命科学が中心になるであろうと予測し、生命科学をめぐる問題点と、それに対する仏教の視点を提示しています。そして「生命科学者自身の問題」として、知識の拡大競争や、本能的欲望、社会的・経済的欲望にとらわれて道徳性・倫理性を失う危うさを指摘し、仏教の「煩悩即菩提」論などに触れています。

各論文が、仏教の視点からの人類的課題解決へのアプローチを考察する上で、読者の一助となることを切望しております。


目次

仏教の平和観 川田洋一
大乗仏教と人権 塩津徹
『法華経』の現代的意義 菅野博史
仏教史における女性の問題 栗原淑江
環境思想への仏教の寄与 山本修一
生命科学に対する仏教の視点 木暮信一
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