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創価学会「法華経写本シリーズ」1 概要

『旅順博物館所蔵 梵文法華経断簡―写真版及びローマ字版』

日本の「大谷探検隊」によって行われた、1902-1904年、1908-1909年、1910-1914 年の3回にわたる探検・調査の結果、多数の西域の文物が収集された。その中に中央アジア系の梵文法華経写本の断簡が多数含まれていた。このなかには、書写年代も書体も異なる様々な断簡が見いだされる。特に、写本A, 写本Bに分類される断簡は、鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』の解明にあたり、重要な手がかりとなる内容を含んでいる。

 

これらの断簡は、日本に持ちかえられることなく、中国にとどめ置かれた。1923年、西本願寺の大谷光瑞師の招聘で上海の無憂園に滞在していたロシアのニコライ・ミロノフが、これらの断簡の整理と研究を行い、ローマ字テキストのタイプ原稿を1927年までには完成していたと考えられる。このローマ字テキストは、1953年にインドのN・ダットによってカルカッタのアジア協会から出版された法華経校訂本(通称ダット本)の脚注のなかに載録された。これらの断簡は、1929年、光瑞師によって旅順博物館の前身である「関東庁博物館」に譲渡された。同博物館は現在「旅順博物館」となっている。旅順博物館所蔵の断簡は、ミロノフのローマ字テキストがダット本に載録されて以後、その行方も含めてその全貌はベールに包まれたままであった。

 

1981年と1987年に、中国社会科学院の蒋忠新研究員(教授)が旅順博物館を訪問、多くの断簡の存在を確認した。大谷隊が将来した写本は、まちがいなく同博物館に保管されていて、ミロノフがかつてローマ字化した写本であること、ミロノフの転写テキストに出ていない断簡も存在していることなどが明らかになった。1994年、蒋氏は北京で東洋哲学研究所の一行と会い、旅順写本の出版の可能性について協議した。翌1995年に同研究所の一行とともに、旅順博物館を訪問し、出版の方向で協議。1996年、蒋氏立ち会いのもとで旅順写本の撮影が行われ、翌1997年春、蒋忠新編『旅順博物館所蔵梵文法華経断簡-写真版及びローマ字版』として出版された。この出版は、長年の学術的課題を解明したという意味でも、創価学会「法華経写本シリーズ」の冒頭を飾るにふさわしいものといえる。

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