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3.「メキシコ創価学会の研究」

メキシコ創価学会の研究

井上大介(東洋哲学研究所委嘱研究員)

メキシコ創価学会についての社会学・人類学的研究を行いたいとの思いから7年前メキシコ国立自治大学人類学研究所の門を叩き、今夏、晴れてその成果を博士論文という形で学術界に問うことができた。評価は非常によく、優秀賞を頂くことができた。

完成にいたるまでには、研究者と信仰者(筆者はSGIのメンバーである)というジレンマに襲われ、内面的研究の客観性維持という社会科学の核心問題に突き当たった。しかし「真の宗教研究は信仰者の手で行わなければならない」との信念のもと、多くの人の応援のお陰もあり、なんとか当初の目的を達成することができた。

研究内容は、ウィルソン、ドベラーレ博士のイギリスSGI研究、ハモンド、マハチェク博士のアメリカSGI研究との比較考察を念頭に置きながら、メキシコメンバーの改宗過程を、組織、教義、文化とのダイナミックなインターアクションを通じて描写・分析したものであり、タイトルは「メキシコの創価学会―異文化に発展した新宗教運動と改宗過程の研究」となった。

周知のとおり、メキシコは世界でも有数のカトリック強国であり、そこでのSGI運動は非常に特色のあるものであった。SGIへ改宗したメンバーにおいては、意識的に過去の宗教と決別する努力がなされる一方で、カトリック的習慣が様々な形で残存する。新しい価値観の受容と旧い伝統の超克は個人のみならず社会全体のテーマとしてもメキシコ社会に広く関与している。それは組織が友人関係よりも家族関係によって発展している事実からも伺えた。しかし、運動に密着したメンバーは着実に日蓮仏教の内在化をおこない、利己主義から利他主義への転換、生命尊厳思想の受容に成功していたのである。

イギリスともアメリカとも違った独自の展開を進めるメキシコSGIの姿を、本研究を通じて理解することができた。今後筆者は、広くラテンアメリカの宗教文化について研究を続けていくつもりである。

(『東洋学術研究』2003年第2号から)
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