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1.「死のイメージの研究」

死のイメージの研究

戸田有一(東洋哲学研究所委嘱研究員)

死の定義や人間にとっての意味に関する問題は、主に医学や哲学の領域で扱われてきたと思われるが、心理学においては、死に関する信念が研究の対象となってきた。

心理学では、「死んだら、どうなると思うのか」が、認知発達との関連で、あるいは自殺との関連で、研究されてきた。認知発達に関しては、子どもたちの多くは、死の諸側面について、就学前後には理解するようだ。死ぬと動かなくなること、死ぬと生き返らないこと、私たちみんながいつかは死ぬこと、などを理解するのが、同じ時点ではないことが興味深い。短時間の観察でわかること、論理的な思考によって得られる結論、等の違いがあるためかもしれない。自殺との関連では、自殺の背景に死に関する特定の信念があるのではないかという問題意識での研究などがある。

筆者は、主たる研究領域である教育臨床的諸課題の研究(いじめ経験の影響、ピア・サポート実践など)と問題意識を通底させつつ、京都大学のやまだようこ教授らの「あの世とこの世のイメージ」の研究グループの一員として、研究を行ってきている。やまだ教授らのグループでは、日・越・仏・英の大学生それぞれ百から二百名強に、あの世とこの世の位置関係や魂の往来に関するイメージ画を描いてもらい、その質的分析や量的分析を行い、国内外で発表してきた。今まで、死に関する心理学的研究は、主に言語データに基づいて行われてきたので、描画に現れるイメージの多様性に目を見張った。筆者は英国の描画の分析を分担したが、魂の描き方に人魂形だけではなく、顔だけのもの、さらにその輪郭の無いものなどがあり、この領域の研究の奥深さをかいま見た。量的指標については、筆者は、他界信念に関する質問項目について、四か国のデータの比較を、特定の国を基軸にせず、全体の様相を視覚的に概観できる、項目間の順序性構造を表示する手法を開発して適用した。まだ熟していない手法であるが、相関に基づく分析手法とは異なる味があると思われる。

(『東洋学術研究』2005年第1号から)
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