ホームSearch Results智慧の泉5.「インド仏教史の時代区分とブッダ観の展開」より

5.「インド仏教史の時代区分とブッダ観の展開」より

「論文BOX」の中から選んで、各論文の概要やねらい、読みどころについて紹介しています。

「インド仏教史の時代区分とブッダ観の展開」「インド仏教史の時代区分とブッダ観の展開」[PDF 2,032kb]

執筆者 三枝充悳氏

『東洋学術研究』の通巻117号(1989年第1号)に掲載された論文です。

【論文の読みどころ】

氏は、仏教が一個の普遍思想として全人類に共有されるためには、従来のような「仏教史に通じた専門家のみが用いてきた原始仏教、部派仏教(かつては小乗仏教)、大乗仏教といった、或る特定の内容を含み固有の名称より成る区分」から離れる必要があるとし、新たに以下のような時代区分を提唱しています。


(1)初期仏教(創始にもとづく興隆)

釈尊から根本分裂(第二結集)あるいはアショーカ王時代まで

(西暦前5世紀ごろ~前3世紀半ばごろまでの約150~200年間)

(2)中期仏教(繁栄)

根本分裂の後に生まれた部派仏教の繁栄と、一方で大乗仏教の発展

(西暦前3世紀半ばごろ~後4世紀初めまでの約550年間)

(3)後期(衰退から滅亡)

グプタ王朝以後のヒンドゥイズムの興隆による仏教の衰退。一方で、学問寺の繁栄・諸学説の展開が見られ、仏教再興への挑戦もあったが、イスラームの侵攻により滅亡

(西暦後4世紀初め~13世紀初頭までの約900年間)


そして、この3区分の「宗教哲学的根拠のひとつとしてのブッダ観の変貌」を概説したのが当論文です。その際、氏は、西洋哲学の「神観念の探究をめぐる宗教哲学」を援用し、その二方向に注目しています。すなわち、神についての「理念(Idee/イデー)」が、「個体化され、実体化され、人格化された理念」としての「理想(Ideal/イデアール)」(具体的にはイエス・キリスト)へと向かう方向、そして「超越から内在へ」と向かう方向です。

氏によれば、初期仏教では「色身の釈迦仏の入滅以降、時代を経るにつれて、釈迦仏は一種の理念(Idee)的存在となり」、中期仏教ではさらにその傾向が強まります。なかんずく大乗仏教では、在家信者の救済への願望を背景に、弥勒仏、阿閦仏、薬師如来など完全な超越者としての仏が説かれますが、これは「釈迦仏において、ないしは理身=法身において、理念(イデー)として想定されていた幾つかの特性を、そのとおりに理想(イデアール)とする諸仏の登場」でした。また仏身観においては、色身と法身の「二身説」で推移しました。

後期仏教においては、超越的な如来が、無自性―空を契機として「内在化」する方向が鮮明になります。「如来蔵」や「仏性」の思想であり、密教では「即身成仏」の思想です。仏身論としては三身論が盛んになりますが、これも「超越者の内在を裏づけようとの意図にもとづくと考えられる」としています。

これをまとめると、仏身二身論が初期に芽生えて、中期に開花し、後期に三身論が整備されますが、これはブッダ観が「理念(イデー)化」され、次に「理想(イデアール)化」「超越化」され、最後に「内在化」される過程と並行していると論じています。

(「論文BOX」には、他に三枝氏の6論文「生老病死と仏教」「縁の平和思想」「〈原始仏教〉について」「般若経の成立史覚書」「経の定義・成立・教理」「関係(縁)・関係性(縁起)・関係主義(縁起説)―とくに『縁』から『縁起』への二つの仮説」が収録されています)

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