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4.「現代フランス社会における『ライシテ(政教分離)』概念の変容より

「論文BOX」の中から選んで、各論文の概要やねらい、読みどころについて紹介しています。

「現代フランス社会における『ライシテ(政教分離)』概念の変容―イスラム子女のスカーフ問題をめぐって」「現代フランス社会における『ライシテ(政教分離)』概念の変容―イスラム子女のスカーフ問題をめぐって」[PDF 1,799kb]

執筆者 満足圭江氏(東洋哲学研究所ヨーロッパ・センター研究員)

『東洋哲学研究所紀要』の第20号(2004年)に掲載された論文です。

【論文の読みどころ】

2003年から2004年にかけて、フランスで「イスラム子女の公立学校でのヘッドスカーフ着用を認めるかいなか」が、国を二分するような議論になりました。

発端は1989年にまでさかのぼります。

この年の秋、パリ近郊の中学校で、イスラム系の2人の女子生徒が「校内でスカーフを着けている」ことを理由に、教師から「教室に入ることを禁止」されたのです。学校側の言い分は、「イスラム子女のスカーフは宗教性が強く」、また「体育や科学の実験のときに危険である」というものでした。

事件はメディアにも大きく取り上げられ、激論を呼び起こしました。他にも同様の事件が続き、論争は長期にわたりました。

そして、2004年、公立学校において「大きな十字架やスカーフ、キッパ(男性のユダヤ教徒が頭にのせている小さな帽子)などの目立つような宗教的しるし」の着用を禁止する法律が制定されました。


イギリスやドイツなど他のヨーロッパ諸国でも、多数のイスラム系移民を受け入れています。しかし、スカーフ着用が大きな問題になったことはありません。なぜフランスでは、これが熱い議論を呼び起こすのでしょうか?

この論文では、議論の背景にあるフランス特有の「ライシテ」概念を取り上げています。

「ライシテ」とは政教分離、非宗教性、世俗性などを意味する概念であり、国家や学校などの公的な空間から宗教色を一掃するという「非宗教性」も、ここからきています。

しかし、それでは「宗教的しるしの禁止」は、信教の自由を定めた同国の憲法や国際法に違反しないのでしょうか?

この問題は、国家と宗教、国家と教育、非宗教的国家が国民を統合する方法などの根源的な問題にかかわってきます。


「ライシテ」は、フランス革命以来、200年をかけて築いてきた「宗教共存の原理」ですが、イスラム人口が500万を超え「フランス第2の宗教」となった今もなお有効なのかどうか――。それが問われているとも言われています。

たとえば、昨2005年秋から拡大したパリ郊外の若者による「暴動」も、背景には、イスラム系移民の2世、3世が抱いている「差別と貧困への不満」があるとも指摘されています。

この論文では、そうした「イスラム・ニューエイジ」にも触れており、フランスの「今」と「未来」を考える糧を与えてくれることでしょう。

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