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3.「信教の自由と『社会通念』」より

「論文BOX」の中から選んで、各論文の概要やねらい、読みどころについて紹介しています。

「信教の自由と『社会通念』」「信教の自由と『社会通念』」[PDF 1,600kb]

執筆者 塩津徹氏(東洋哲学研究所主席主任研究員)

『東洋学術研究』の通巻132号(1994年第1号) に掲載された論文です。

【論文の読みどころ】

「靖国神社問題」のたびに話題になるのが、憲法の「政教分離」原則です。

ところが、その解釈をめぐっては、国家と宗教の「分離」を厳格に解釈する立場から、緩(ゆる)やかに解釈する立場まで一様ではありません。裁判の判例も、まちまちなのが現状です。

こうした「混乱」の背景のひとつに、日本社会の「宗教観のあいまいさ」を指摘する声も少なくありません。

この問題を考える一つのヒントを与えてくれるのが、同論文です。


ここでは、「政教分離の原則に反しているかいなか」をめぐって争われた事例の中から、裁判所が「社会通念(日本人の一般的な宗教観)」を基準に判断したケースを具体的に検討しています。次の4判決です。

①三重県津市が市の体育館起工に際し神道式の地鎮祭を挙行したことに対して争われた「津地鎮祭」訴訟の最高裁判決(1977年)。

②大阪府箕面市が小学校の敷地内の忠魂碑を別の土地に移設し、箕面市遺族会に無償で貸与したことに対して争われた「箕面市忠魂碑」訴訟の大阪高裁判決(1987年)。

③愛媛県知事が靖国神社の例大祭などに際して玉串料・献灯料等の名目で公費を支出したことに対して争われた「愛媛玉串料」訴訟の高松高裁判決(1992年)。

④殉職した自衛官が山口県護国神社に合祀されたことに対して、自衛官の妻(キリスト教徒)が合祀の取り消しを求めた「殉職自衛官合祀拒否」訴訟の最高裁判決(1988年)。


論文では、これらの共通点として「社会通念とされた一般人の評価、認識を根拠に、憲法上の国家と宗教(これらの場合、神道)との関わりを認め、つまり政教分離の原則を緩やかに解釈し、合憲の判断を導いているということである。うがったいい方をすれば、緩やかな解釈を正当づけるために、わが国における一般的な宗教観を社会通念として提示し、合憲の結論を出しているともいえなくはない」としています。

そして、このような判断の問題点をいくつかあげています。

たとえば、宗教に関する問題を「多数者の宗教観・宗教意識がこうだから」ということで決定すれば、それは少数者の宗教観を否定し、信教の自由を侵害することになりかねないといった点です。

また、日本人の宗教観が「雑居的」「無節操」とさえ言われる現状であればこそ、その現状を基準にして憲法を解釈するのではなく、むしろ反対に、だからこそ憲法の「政教分離の原則」を厳しく解釈することによって、政教分離原則を社会に根づかせる必要があることを主張しています。

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