ホーム講演会2011年(平成23年)

第4回「イスラーム神秘主義(スーフィズム)の思想と実践」

青柳氏は、スーフィズムについて「日常生活を規定するイスラーム法を遵守するだけでは得られない、内面的な心の平安を獲得しようとする試み」と紹介。「禁欲主義を源流とし、神への愛による神との合一を目指すスーフィズムは、もともとは一部のエリートの運動であった。反対も多かったが、やがて公認され、大衆化された」とし、多くの写真や動画をまじえながら、大要、以下のような諸点を語った。

 

◎イスラーム世界は、大征服時代を経て富裕になるにつけ、現世的傾向が強まった。そうした動向への反省・反発から「禁欲主義」や、自己の利害(審判への恐れや天国への望み)を超越した「神への愛」が強調されるようになり、スーフィズムが形成された(9世紀半ば以降)。

 

◎スーフィズムは「神との合一(ファナー)」を重視するが、それを恋人などへの愛として語る「スーフィー文学」が生まれた。代表作に、ニザーミー(1209年没)の『ライラとマジュヌーン』等がある。

 

◎内面を重視するスーフィーと、イスラーム法の遵法を重視するウラマー(法学者)が対立するようになり、処刑されるスーフィーまで生まれたが、ガザーリー(イスラーム思想史上最大の思想家の一人・スンナ派思想の完成者/1111年没)が両者の橋渡しをしてから、公認された。以後、スーフィー教団(タリーカ)が形成され、スーフィズムが大衆化。アフリカ、インド、東南アジアなども含めた広範な地域のイスラーム化の要因となった。19世紀、スーフィー教団は反帝国主義闘争でも重要な役目を担った。

 

◎スーフィズムでは「聖者崇敬」と「聖者廟参詣」が重要な実践。ただし、シーア派では、聖者の中でも特にイマーム(シーア派の指導者/アリーとその子孫)を崇敬する。

 

◎スーフィズムは、神との合一を目指して、心を神に集中させるが、具体的な修行は教団により異なる。主なものに「ズィクル(一定の唱句を繰り返し唱える)」と「サマー(歌舞音曲)」がある。前者は「アッラーフ、アッラーフ(神よ、神よ)」「ラー・イラーハ・イッラー・アッラー(アッラーのほかに神はなし)」といった唱句を、繰り返し心の中で想起したり、口で唱える。後者には、一心不乱に回転を続ける旋回舞踊を伴うこともある。

 

◎スーフィー教団のひとつ「メヴレヴィー教団」は、聖者廟・旋回舞踊を複合させた。ルーミー(ペルシア文学史上最大の神秘主義詩人・スーフィー聖者/1273年没)を開祖とし、中心地はトルコ。スカートをはき、音楽に合わせて、くるくると回り続けるが、回転は天体の運行を表しており、回転を通して神と一体化しようとする。トルコ革命(1923年~)以後、脱イスラーム化を推進したトルコ政府は霊廟を破壊し、教団を解散させたが、現在はトルコの伝統文化として復興している。

 

◎総じて、スーフィズムのかつての隆盛は、イスラーム主義運動組織の台頭に取って代わられている。

 

 

 

 

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