ホーム講演会2011年(平成23年)

第3回「現代イスラーム文化と日本社会」

 講演では、まず、イスラーム世界を理解するうえでの基本について、以下のような話があった。

◎ムスリム(イスラーム教徒)は、世界人口のほぼ4分の1を占める。また、ムスリムが大部分の国、国の「重要なマイノリティ」となっている国を合わせると約110カ国になる。現在、最も急速に拡大している世界宗教がイスラームである。

◎イスラーム世界の「ホスピタリティ(もてなし)」の文化、どんな違いがあっても、神のもとに「人間は平等だ」という信念、「みんな一緒に」苦しみ、楽しもうという心性、「弱肉強食」を否定し、「敗者復活」を推進する価値体系。こうした点は、既存の国際社会に「別の選択肢」を提供していると思う。西洋近代文明だけが「文明」ではなく、科学技術だけが「技術」ではない。「人を結び、円滑に社会を運営する」技術も重要である。

◎漢字など「文字中心の言語」は視覚的イマジネーションが中心だが、アラビア語は「音中心の言語」と言え、聴覚的イマジネーションが中心となる。

◎近代に入って、イスラームはナショナリズムや自由主義、資本主義などに押されてきたが、その後、復興しつつある。そこには「近代化したから」イスラームが復興している面と、「近代化に取り残されたから」復興している面がある。

◎イスラームのバイタリティの源泉としては「理念のシンプルさ、実践の力強さ」「聖職者がいない(教会がない)ことの自由さ」「非近代的な精神性でもいいし、近代派でもいいという柔軟性」「現世が駄目でも、来世があるという二重底的な強さ」などが挙げられる。

小杉氏は結論として、次のように述べた。

――文明には、新たな創造をする「発電型文明」と、それを改良し普遍化する「変電型文明」があり、日本は後者の代表であると思う。歴史上、新たな文明は「辺境」から生まれることが多かったが、地球上に今や「辺境」はない。ゆえに、現代の地球的問題群の解決に求められるのは、まったく新たな文明というよりも、各文明の長所を取り入れた「文明の融合」であろう。そういう課題に対して、さまざまな文明を吸収してきた「変電型」日本文明は大きな貢献ができると信じる。

 

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