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「21世紀における宗教の役割-宗教学からみたSGI」

2009年に行われた講演会です(最新順)。肩書は開催当時のもの。


「21世紀における宗教の役割-宗教学からみたSGI」(講演の要旨)

講師 M・フォン・ブリュック博士(ミュンヘン大学教授)

 

転換期を背景に改革を実行

仏教には、その伝統自体を再構成し、つくり直すという歴史がありました。しかし、時に大変に保守的になるのも、また仏教でありました。

釈尊が仏教を創始したのは、大きな危機的状況に直面し、それを打開するためでした。それは、日蓮も同じですし、創価学会の牧口常三郎初代会長も同じでした。そして、1991年、創価学会が宗門と決別したのも、危機に際しての運動として、一つの原型を見る思いがします。

私は今、「危機(クライシス)」という言葉を使いましたが、この言葉の語源であるギリシャ語では、必ずしも否定的な意味ではありません。むしろ、何かの「転換期」、将来を左右する「分岐点」といったことを示唆しています。

比較宗教学の視点から見た時、日蓮は卓越した改革者であったと言えます。それは、危機感、あるいは時代の転換を一つの背景として改革を実行していったという意味です。

改革に対して、大変にオープンであるというのが、大乗仏教の特徴です。それによって、社会に深くかかわろうとする形態の在家仏教が生まれたのではないかと思います。

日蓮の仏法は、13世紀という当時からすでに社会に深くかかわる宗教でしたが、その最も顕著な例が、近代の創価学会の出現ではないかと見ています。

また、日蓮は漁師の家に生まれました。これは大変に重要な特徴ではないかと考えます。鎌倉時代の偉大な改革者と呼ばれる人々の中で、日蓮のみが、いわゆる貴族の家系の出身ではありません。日蓮は天台宗にはびこるさまざまな矛盾に失望し、そして徹底的な公正さをもって、仏教的な道徳倫理を、社会や政治問題に反映させようとしたわけです。

そういう観点で見ると、日蓮は、釈尊やイエス、あるいはドイツの宗教改革を実践したルターらに匹敵する改革者、創始者であったと考えられます。

 

青年の教育と女性の力が重要

日蓮は、衒学的な僧侶による形式化した仏教を否定しました。より簡素な実践に基づく信仰を選択し、仏教の精神性の核心に迫ったのです。そして、庶民の生活で実行できる信仰ということが、日蓮仏法の特筆すべき点ではないかと思います。

日蓮にとって仏教とは、世界を変革する実践であり、現在、創価学会、SGIが継承している精神こそ、その核の部分ではないかと思います。

歴史的に見た時、初期の仏教は、個人の救済、そして社会を変革する運動、その両方の側面をもった教えでありました。釈尊は、なにも世の中を放棄した行者だったわけではありません。

今日、創価学会は在俗の信徒による運動を展開しています。もちろん、大乗仏教において、創価学会の前にも信徒中心の宗教運動はありました。しかし、これほど大規模な信徒の運動は、今まで仏教史の中にはなかったと考えます。

ここで強調したい点は、教育の問題です。特に、青年への教育です。学校教育、つまり自然科学や技術、そういったものを外から取り込む教育だけでなく、仏教で言ういわゆる心を耕す、精神を耕すという意味での教育も、非常に大事だと思っています。

知の部分と情の部分の両方を、バランスをとって耕していくことが、極めて重要です。その意味でも、創価学会の教育に対する情熱は、大変に素晴らしい。創価一貫教育についても、ここにこそ人類発展のカギがあると感じました。

もう一つ重要な点は、女性に力を与えるということです。創価学会は新たな試みをしながら、女性の指導者を育成し、組織の中でも重要な立場を与えています。台湾の仏教界に若干、例外はありますが、今までの仏教において、女性は二次的な役割しか与えられてきませんでした。女性は、仏教の伝統の中では、最初から積極的な参加者であったにもかかわらずです。

 

手を携えてよりよい社会へ

広く社会に反応し、人類の向上に貢献していく。そして価値を創造していく---それが宗教の役割ではないかと思います。まさに、それを実践しているのが創価学会なのです。

繰り返して強調しますが、おそらく、創価学会が宗門と別れたことは、非常にクリエーティブ(創造的)な危機感、あるいは転換点ということが一つの動機になっていたのではないかというのが、私自身の解釈です。

それは仏教に限ったことではなく、伝統宗教の矛盾に新しく立ち向かっていった例は、さまざまな宗教にもあります。

つまりこれは、大きな新しい生まれ変わりの運動の一つだと、私はとらえています。

ここで、最も大事になってくるのは、宗教間対話です。

宗教間対話は、ただ単に、異なる宗教を信仰している人たちが会って、握手をして、お互いのご機嫌をとって仲良くなりましょうということではありません。

むしろ、それぞれが持っているさまざまな精神的財産をテーブルの上に出して、手を携えてよりより社会をつくっていこう、青年を教育していこう、人類の向上に貢献していこうと、理解を深め合う場であると思います。

 

【略歴】レーゲンスブルク大学教授(比較宗教学)を経て、1991年、現職のミュンヘン大学教授(宗教学)に。専門はヒンズー教、仏教、宗教間対話の解釈学。著書に『永生か再生か? ヨーロッパ文化とアジア文化における死、来世への希望』『仏教入門』『仏教とキリスト教:歴史、対決、対話』など。

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