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「法華経とシルクロード」展――コラム

欧州初の「法華経とシルクロード」展に寄せて/「法華経」の精神を現代に

東洋哲学研究所委嘱研究員 水船教義


欧州で初となる「法華経とシルクロード」展が、ウィーン(3月25日~4月24日)とドイツ・ヴォルフェンビュッテル(5月5日~28日)で開催され、多大な反響を呼んだ。同展に携わった東洋哲学研究所委嘱研究員の水船教義さんに、一文を寄せてもらった。

(※聖教新聞2000年6月22日付より転載)

法華経写本3巻完成の壮挙

一昨年11月の東京展の際、法華経写本など展示物を所蔵するロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトペテルブルク支部との連絡を担当した関係から、今回の展示も側面から協力させていただいた。

ここでは、ここ数年の創価学会を中心とした、法華経写本のプロジェクトの全体を紹介したい。

1994年1月、創価学会にサンスクリットなどの法華経写本をシリーズで出版していくための委員会が発足し、研究・編集の実務は東洋哲学研究所に委託された。

1997年の5月に「法華経写本シリーズ」第1巻として、中国・旅順博物館との共同出版『旅順博物館所蔵梵文(ぼんぶん)法華経断簡』(旅順本)が完成。

98年11月に第2巻『ネパール国立公文書館所蔵梵文法華経写本(No.4―21)――写本版』(ネパール本)、本年5月に第3巻『カーダリク出土梵文法華経写本断簡』(カーダリク本)と順次出版されてきた。幸い世界の仏教研究者からも高い評価を得ることができた。

一方、法華経展の発端は、84年11月、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長が当時のA・P・アレクサンドロフ・ロシア科学アカデミー総裁にペトロフスキー本法華経の日本での展示を提案したことにさかのぼる。

96年11月、来日していた東洋学研究所サンクトペテルブルク支部のペトロシャン所長(当時)が池田SGI会長に「法華経展」の構想を披露。それを受けて開催に向けての検討・準備が始まり、2年後に東京展として実現、法華経はじめ重要経典の写本・版本14言語、47点が公開された。

その後、オーストリア、ドイツと相次いで開催されたが、その背景には、東京展の成功に触発された両国のSGIとともに、数多くの仏教学者が「法華経展」の重要性に深く賛同したことがあげられるであろう。

ドイツをはじめ仏教研究では世界をリードしてきた欧州で、「法華経展」が開催された意義は極めて大きいと思う。

いずれにしても、開催の決定から開幕までそれほど準備の期間があったわけでもないのに、成功裏に終えることができたのは、会場の手配、カタログの作成、各関係者間の連絡調整等に全力を尽くした、両国SGI、東洋学研究所、そして何より会場となった各図書館の担当者の方々の努力のたまものである。

秘蔵・カーダリク本も公開

ドイツ・ヴォルフェンビュッテルのヘルツォーク・アウグスト図書館での展示会の開幕式は、「カーダリク本」の発表会も兼ねていたので、日本側の連絡担当者として出版にかかわった筆者も参加できた。

「カーダリク法華経写本」は、今世紀初頭、中国・新疆(しんきょう)のホータンの東115キロの地点にあるカーダリクで発見されたもので、現地の盗掘者によってばらばらにされ、ヨーロッパの探検隊等に売却されていた写本である。

その後、ドイツ・イギリスの学術機関の所有するところとなり、現在はベルリン国立図書館のトゥルファン・コレクション、ミュンヘンの国立民族学博物館のフランケ/ケルバー・コレクション、ロンドンの大英図書館のスタイン・コレクションとヘルンレ・コレクションに保存されていることが確認されている。

ゲッティンゲン大学インド学仏教学研究所のクラウス・ヴィレ博士は、88年以来、これら4つのコレクションに散在している梵文法華経の断簡(写本が破損したもの)の写真を集め、整理し、97年までに序論(ドイツ語)、ローマ字転写本、対照表を完成させたのである。

その後、英語版にして、創価学会の「法華経写本シリーズ」として出版することが決定。ドイツ語の部分はヴィレ博士自ら英訳し、また、出版用のカラー写真も写本を保存している各学術機関から取り寄せ、99年には出版の準備が整った。製版・印刷は日本で行われ、本年5月初め、写真版付き291ページの本として完成し、5日のドイツでの法華経展に間に合うよう筆者自ら会場に持ち込み、陳列させていただいた。

その後の「カーダリク本」への反響はきわめて大きく、専門家から次々と称賛と驚嘆の声が寄せられている。

とりわけ、ヴィレ博士が作成した中央アジア出土の各種梵文法華経テキストの精緻な対照表(コンコーダンス)は、専門家必携の資料との評価が下されている。

さらなる展示に期待も高まる

ドイツ展の開幕式には、ロシアからの東洋学研究所サンクトペテルブルク支部所長クチャーノフ教授、仏教写本の研究家ヴォロビヨヴァ博士はもちろん、ドイツの仏教研究者の多くが一堂に会した。

ほかにもゲッティンゲン大学のベッヘルト教授(インド学仏教学研究所所長)、会場のヘルツォーク・アウグスト図書館館長のシュミット=グリンツァー博士(中国仏教)、ハンブルク大学エメリック教授(中央アジアの仏教)、サンスクリット仏教写本の文字解読の第一人者ザンダー博士(女性)、80歳を超える高齢にしてなおインドを訪問し仏教の研究を続けるロート博士等々、さながら仏教写本学会を開催したかのような感があった。

また、各種インターネットのホームページにも紹介されるなど、「法華経展」の反響の大きさを物語っている。ホームページには展示品の写真、詳しい説明文が載っているので、いながらにして展示を観賞することが可能になったのである。当然、ホームページを見て、展示があることを知り、会場を訪れた専門家も少なくなかった。

今回のオーストリア、ドイツでの成功により、さらに、新たな展示への期待も高まってきている。

法華経写本関連のプロジェクトを軸に、97年5月の「旅順本」の発刊以来、築き上げてきた創価学会・東洋哲学研究所と世界の仏教学者との協力関係の輪が、大きな成果となり、ひいてはSGIの文化運動への正しい評価につながってきていることは間違いない。

とりわけ専門家の中には、正しい知識の欠如から、これまで創価学会やSGIに対して批判的だった人も、今回の展示を通して認識を大きく改めてきている。

ある教授などは、「旅順本」の出版以来、これまでの態度が一変し、今回の展示と「カーダリク本」の出版を側面から応援してくれるまでになった。

創価学会並びにSGIの真摯な文化学術への貢献の一貫した姿勢が、世界の学術界での評価を確実に変えていったのである。

「法華経」の精神を現代によみがえらせる創価学会の存在が、仏教学者のみならず、欧州社会に浸透しはじめた感を深くした展示会であった。

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