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リポート「国際宗教学宗教史会議の東京大会」

リポート「国際宗教学宗教史会議の東京大会」
満足圭江 (東洋哲学研究所ヨーロッパ・センター研究員)
(※聖教新聞2005年4月5日より転載)


日本で開講100年の意義込める

第19回国際宗教学宗教史会議(IAHR)世界大会が、3月24~30日にかけて、東京都内で盛大に開催された。同会議は、1950年に創設され、現在、世界40カ国以上の研究団体・学会が所属する世界最大の宗教研究者の団体であり、ユネスコの支援を受けている。

宗教研究者のネットワークを世界中に広げることによって、宗教研究の発展に貢献することを目的としたこの団体は、5年ごとに世界大会を行っている。日本で初の宗教学講座が開講されて100周年を迎え、さらに、日本宗教学会創立75周年を記念する本年、日本でこの会議が開催されたことは、大変意義深いことである。

なぜなら、戦後、日本で宗教学研究が飛躍的な発展をとげたのも、1958年、東京での世界大会開催がひとつのエポックメーキングとなっているからである。当大会が日本の宗教研究のグローバル化にもたらす効果は現在もはかり知れない。


「宗教――相克と平和」を総合テーマとした本年の大会には、海外から約700人、国内から800人以上の研究者が参加し、各自の専門分野を超えた、学際的な研究交流の場となった。「相克と平和」は、国際社会にとって、現在最も重要なテーマの一つであり、この問題に果たす宗教の役割が誰人も無視できないものであることは、昨今の戦争や紛争の事例を見ても明らかである。

この総合テーマに関して、5つのサブテーマが決められた。

(1)「戦争と平和、その宗教的原因」(2)「技術・生命・死」(3)「普遍主義的宗教と地域文化」(4)「境界と差別」(5)「宗教研究の方法と宗教理論」

そして、これらのテーマに基づきながら、次に挙げるいくつかの点を中心に会議は進められ、活発な討議が行われた。

まず、宗教は、目に見える形であれ、見えない形であれ、権力と結びついている。つぎに、宗教は、人々のアイデンティティーの標識として役立つが、ときには集団間の暴力の原因となることもある。さらに、宗教は、ジェンダー、世代、階級、その他の社会集団の関係に規律を与える一方、理想的な関係を説くこともできる。最後に、宗教は、平和と調和、あるいは、暴力と憎しみに究極的な根拠を与え、混乱を起こすこともある。

SGI研究の世界的進展が目立つ

24日の開幕を飾った「宗教と文明間の対話」と題した公開シンポジウムでは、大会実行委員長であり、日本宗教学会会長でもある島薗進・東京大学教授が司会を務め、4人のパネリストが登壇した。パネリストの一人として、現在「第三文明」誌で池田SGI(創価学会インタナショナル)会長との対談を連載中であるハーバード大学のドゥ・ウェイミン教授が「対話的文明に向けて――公的知識人としての宗教指導者」というテーマで、基調講演を行った。

ドゥ教授は、「政治に関心をもち、社会へとかかわり、文化について鋭敏である、そのような存在として公的知識人がもつ高邁なる志とは、世界市民たることである。そして現在のグローバル化の時代にあっては、対話的文明の出現により、世界市民なるものに基盤が与えられるようになった。対話的文明とは、人間的、かつ精神的なものである」と語った。


また、SGI会長と対談を行った故ブライアン・ウィルソン教授が創設した国際宗教社会学会からも歴代の会長が参加した。

なかでも今回、多忙な中、ドゥ教授につづいて、東洋哲学研究所の主催で講演をしたベルギー・ルーヴァン大学のカレル・ドブラーレ教授は「文明間の対話:宗教社会学を通して」というテーマについて語り、夫人のリリアンヌ・ヴォワイエ、ルーヴァン大学教授は、「宗教問題に関するヨーロッパ諸国政府の政策の国家主義的な側面」という題で報告をした。

さらに、SGI研究においても、「イギリスにおける第2世代の創価学会」「日本におけるブラジル移民の宗教活動」「創価学会、日本の教育システムにおける『価値』の真髄」などと題した研究報告が、イギリス、ドイツ、シンガポール、カナダ、ブラジルから来た研究者によって行われ、SGI運動研究の世界的な進展を象徴していた。

東洋哲学研究所からは8人が発表

東洋哲学研究所からは私を含めて8人の研究員が、法華経、中国仏教、日蓮仏教、池田大作研究などについて、各自に日ごろの研究成果を発表し、多くの研究者と意見を交換することができた。

私は「現代フランス社会における政教分離概念の変容――イスラム子女のスカーフ問題をめぐって」という題で報告を行ったが、イスラム研究の専門家よりスカーフの宗教的な意味について意見をいただいたり、アフリカ、アラブ、他の欧米諸国の研究者がどのようにこの問題を捉えているのかを知り、よりグローバルな学問的視点を得ることができた。

現在ではインターネットを通して、世界中のほとんどの文献を読むことができる。しかし、研究者同士が顔を合わせて討論することの重要性が、改めて本大会によって確認できたと思う。


SGI会長は「宗教のための人間ではなく、人間のための宗教を」と常々訴えているが、宗教だけが原因で戦争や暴力が起こるのではなく、宗教には平和を築く源となりうる力があることが、本大会において、宗教学、歴史学、社会学、人類学、心理学、文献学などの様々な角度から検証された。すなわち、宗教ではなく、人間精神こそが、戦争あるいは平和をもたらす根源であるとの思潮が、参加した多くの研究者たちの間に流れていたようである。

「対話的文明」の21世紀となるべく、宗教間対話、文明間対話の実現に向けて、さらなる自己の専門分野での研究の深化と、日々対話への努力を積み重ねることの大切さを学んだ大会であった。

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