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第35回 学術大会・シンポジウム

 

(上段左から、東京大学名誉教授で星槎大学学長の山脇直司氏、同志社大学客員教授で作家の佐藤優氏、東洋哲学研究所研究員の山崎達也氏。下段左から、同研究所所長の桐ケ谷章氏と委嘱研究員で司会の蔦木栄一氏)

 

第35回学術大会が5月29、30日にオンラインで開催された。研究所の学術大会は、国内外の研究員・委嘱研究員が集い、法華経研究をはじめ、宗教間・文明間対話、平和と人権、環境問題などの課題克服の研究成果を発表する機会であり、それぞれの専門・研究分野を踏まえたテーマで発表を行った。

 

1日目(5月29日)にはシンポジウム「21世紀における信仰と理性――創立者の『スコラ哲学と現代文明』講演の視座から」をオンライン(登壇者はZoom、参加者はYouTubeライブ配信にて視聴)で実施した。※シンポジウムの詳細は「東洋学術研究」に掲載

 

コロナの挑戦に人類がいかにして応戦しゆくかの喫緊の課題に対して、池田大作先生が1973年に行った「スコラ哲学と現代文明」講演のなかから、「現代ほど宗教を喪失してしまった時代もなく、それゆえに救済のない時代もない。――この現実のうえに私たちは生き続けているのであります。このように認識するとき、最大の緊急事というべきものは、現代に耐え、現代を導くに足るだけの哲学の樹立であり、その基盤をなす真の宗教の確立であります」との指針を契機として開催を試みたもの。このテーマに対して、東洋哲学研究所と交流を結ぶ山脇直司氏(東京大学名誉教授、星槎大学学長)と佐藤優氏(同志社大学客員教授、作家)の2人を招聘し、当研究所研究員の山崎達也氏とともに発表を行うことを企画した。

 

山脇直司氏は2017年7月と9月に、東哲主催の「社会と宗教」研究会と連続公開講演会において「公共哲学とは何か」「宗教の公共哲学」について発表を行った。また「東洋学術研究」誌上で「世界人権宣言」採択70周年記念てい談「人権・公共哲学・宗教を語る」にも登壇者の一人として参加している。山脇氏は、一橋大学を卒業後、ドイツ・ミュンヘン大学にて哲学博士号を取得。東海大学、上智大学、東京大学などで教鞭を取ってきた。公共哲学と社会思想史を専門とし、特に公共哲学は近年注目を集めてきた分野であり、氏の著作が中学・高校及び大学の入学試験や教科書に採用されるなど、第一人者として活躍。また通信制大学である星槎大学の学長として、コロナ禍をリードする教育活動に尽力している。

 

佐藤優氏は、同志社大学神学部を卒業後、同志社大学大学院神学研究科を修了。専門職員として外務省に入省後、英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。帰国後、外務省国際情報局で主任分析官に。現在は作家として執筆や講演、寄稿などの言論活動を中心に活動し、2020年10月にはその優れた文化活動に対して第68回「菊池寛賞」が贈られている。専門は組織神学で、2019年10月の連続公開講演会では「キリスト教における神権と人権」を発表。池田先生の研究所創立構想60周年の2021年には、研究所ニュースレターと「東洋学術研究」誌上に祝賀のメッセージを寄せている。

 

山崎達也氏は、創価大学文学部卒業の後、同大学大学院で学び、ドイツ・ボーフム大学カトリック神学部への研究留学などを経て、南山大学にて文学博士号を取得。中世哲学、神学を専門とし、東哲においては「宗教間対話」プロジェクトのプロジェクト長として、テーマである「スコラ哲学と現代文明」講演や井筒俊彦の東洋哲学などについての研究活動を推進している。

 

シンポジウムでは、桐ケ谷所長の挨拶の後、それぞれが以下の発表を行った。

 

 

●「信における内在と超越―中世スコラ神学から法華思想へ―」

(山崎達也 東洋哲学研究所研究員)

 

創立者は講演「スコラ哲学と現代文明」のなかで、宗教と哲学、信仰と理性の一致を証明することにその動機があったと述べている。しかしながら、本講演ではさらに、トマス・アクィナスが神に関する第一真理が理性には及ばない領域にあるものとして理性に対する信仰の優越性を強調したことにも言及され、ここにスコラ哲学の当初の目標が微妙に揺らいでいることを創立者は読み取っている。日蓮大聖人は「御義口伝」において「一念信解の信の一字は一切智慧を受得する所の因種なり」と述べている。如来の智慧から見れば、無明と法性は体一である。その智慧が信といわれるならば、ここに信と知との一致が見られるのかもしれない。しかしそれでもやはり、時間的世界に生きるわれわれ人間には自らの内奥の無明との絶えざる闘いが信仰なのである。

 

●「ヨゼフ・ルクル・フロマートカの人間論」

(佐藤優 同志社大学客員教授、作家)

 

本発表の目的は、チェコのプロテスタント神学者ヨゼフ・ルクル・フロマートカの人間論の特徴を明らかにすることを通じて、キリスト教徒と他の宗教を信じる人々、あるいは宗教を否認する人々との対話の基盤を神学的に位置づけることにある。フロマートカは「悪や罪は、宗教的な生活のどこかの外れで生じるのではない。むしろ神に近いところで、神がその支配を宣言し、神が無条件の至高性と共に現れるところで生じるのである」と指摘する。さらに、隣人愛に基づく真摯な行動と対話が、悔い改めの契機になると主張する。こうした点は、すなわち信心とは即行為に現れるという創価学会との共通性がある。悪は、人間が他者を自己の利己的な目的のために利用するときに増殖する。フロマートカは「悪と罪がとくにはびこるのは、人間が他者を踏みにじるところ、他者の尊厳を傷つけるところ、自分の利己的な目的のために他者を利用するところである」と強調する。他者を利用する人間は、同時に他者の尊厳を傷つけ、踏みにじるのだ。このような悪を目の前にしたときにキリスト教徒は戦う義務がある。目の前にある具体的問題について、チェコスロバキアの置かれている現実の中で、共産主義者と真摯に対話することが重要とフロマートカは考え、1950年代後半から60年代に実行したのである。頑なな他者の心を解きほぐし、対話を可能にするアプローチとしてのフロマートカの言説は、創価学会の折伏の行動と同様であるのではないだろうか。今回のシンポジウムを通じて、東洋哲学研究所創立者の思想を学術的なアプローチで捉えていく時代が到来したと実感する。

 

●「宗教間対話と学問体系における信仰と理性」

(山脇直司 東京大学名誉教授、星槎大学学長)

 

どの宗教にも部分的に見出されるような、自ら信じる宗教原理や経典を超歴史的に絶対化し、他の宗教を絶対的誤謬とみなして排斥する態度や思想は避けなければならない。そうではなく、各信仰者が何らかの宗教にコミットしながら自らが信じる宗教や経典の「歴史的規定性」を十分自覚し、他の宗教との「差異性」のみならず「共通性」をも対話などによって探っていくような態度こそ、理性と両立可能な現代にふさわしい信仰のあり方と言える。人類史における宗教の正の遺産は、過小評価されるべきではないだろう。宗教は特に、絶望に打ちひしがれた人々に希望を与え、生きる勇気を与えたという点で、今日でも引き継がれるべき正の遺産を持つと言えよう。過度の世俗化が進んだ現代社会において、皮相的なリアリティから人々を解放し、死すべき運命を担う個々の実存の意味への思索を促すための宗教間対話は、今なお、重要であろう。しかし、21世紀の今日、宗教間対話を促進する上で、諸宗教が過去の負の遺産(たとえば、カトリックでの魔女狩りや異端審問など)を記憶・反省し、二度と繰り返さないよう自覚することも必要である。宗教に根を張った学問体系をどのように構想・構築するかは、宗教や宗派を超えて池田SGI(創価学会インタナショナル)会長の思想に共鳴する学者の多くにとって、大きな課題であろう。

 

発表後には、パネルディスカッションを行い、登壇した3人がそれぞれの発表へコメントと質問を寄せた。また、参加者との質疑も活発に行われた。

 

 

2日目(5月30日)には研究発表大会(Zoomにて実施)として、以下の発表が行われた。

 

・The Ten Worlds of Tiantai Zhiyi within Atiśa's Stages of the Path(ジェームズ・アップル 海外研究員)

・牧口価値論成立史に関する一考察(伊藤貴雄 研究員)

・講演「スコラ哲学と現代文明」に学ぶSDGsの潮流(光國光七郎 委嘱研究員)

・ブルガリア語版 新・ジュロヴァ対談集について(二宮由美 研究員)

・ウラジーミル・ナボコフの「ロシアの検閲官・作家・読者」を読み直す(寒河江光徳 委嘱研究員)

・教職育成と学校現場との解離(大久保俊輝 委嘱研究員)

・自殺現象に関する考察ー社会脳を発達させた人類を焦点にしてー(山口力 委嘱研究員)

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