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第32回 学術大会

 

東洋哲学研究所の研究員が研究成果を発表する第32回学術大会が3月19、20日の2日間にわたって開催された(会場:19日=創価大学/20日=東洋哲学研究所)。

研究所創立55周年の節目を飾る学術大会には、国内外の研究員・委嘱研究員が集い、法華経研究をはじめ、宗教間・文明間対話、平和と人権、環境問題などの課題克服をテーマに活発な発表が行われた。

19日午後のシンポジウム「人類的課題と仏教」では、タイ王国・世界仏教徒大学より、ノーラニット・セータブット学長とパッタラポーン・シリカンチャナ副学長を招聘。同大学は、高度な仏教研究の推進を目的にして設立された学術機関で、2002年より東洋哲学研究所と交流を続けている。

 

※シンポジウムの詳細は「東洋学術研究」に掲載

 

ノーラニット学長は「仏教と平和」をテーマに、大要、以下のような講演を行った。

今日の世界は、グローバル化によって、人々が簡単に知り合えるようになりました。しかし、そうした結びつきの一方で、戦争にまで発展してしまう紛争や対立がなぜ、起こってしまうのでしょうか。

現在の世界は、シリア内戦、アフガニスタン紛争、ウクライナ内戦といった、さまざまな形で多発する争いが起こっています。エスカレートしていくこれらの争いは、人間が引き起こしてきたのであり、未だに絶えることはありません。紛争は、深刻な状況となる前に止めなければならないのです。では、どうしたら止めることができるのか。私は、仏教徒として、しばしば釈尊の教えに思いを馳せます。その一つが「四諦」です。これを応用することで、平和を構築できるのではないかと思います。

戦争の苦しみが「苦諦」であるならば、その根本原因を探り、滅する実践をしていかなければなりません。その実践によってはじめて、「道諦」となり、苦から離れることができるのです。

戦争は人間によってもたらされるものであります。言葉を換えれば、指導者によって始まるのです。指導者が、利害や感情によって善の判断を行う眼が曇らないようにしなければなりません。人類的課題の解決には、指導者が平和を築く大きな責任を担い、「柔和」「自制」等の“十の徳”を備えていくことが必要です。それによって、私たちは平和の道を開いていくことが可能となるのです。

また、パッタラポーン副学長は、大要、以下のような講演を行った。

今日、多くの人が環境の危機や災害に実際に直面しており、環境問題とその責任に対して、警鐘が鳴らされています。人間の欲望に支えられた近代化とその無責任な活動が、私たちの環境と生活の質にますます悪影響を与えています。道徳心や倫理の育成を基調とした人間の開発なしには、いかなるかたちの開発も意味をなしません。私たちは、教育の欠如、正しい動機の欠如、そして、正しい見識の欠如により、誤った開発の道をたどっています。私たちの病める社会を回復させるためには、持続可能な開発が確かに必要なのです。

仏典では、多くの句を通じて、環境への配慮や自然の保全が促されています。パーリ三蔵の相応部(サンユッタ・ニカーヤ)には、仏教徒が、個人の成長に有益となる、きちんとした生活様式や善なる活動、行い、環境について知るため、戒を具足すること、すなわち道徳的指針を達成するように修習する、とあります。私たちは、仏典を通じて、基本的なレベルの道徳性、例えば、社会と自然の関係のなかでの正しい振る舞い方を取り入れるように学ぶのです。

私たちは自然の一部です。自然的であれ社会的であれ、自然や環境が破壊されれば、幸せに暮らすことはできず、ほとんど生き残ることもできません。私たちの環境に対する配慮は、私たちの世代だけにとどめるべきではなく、世界全体のために、次の世代へとつないでいかなければならないのです。


シンポジウムでは、東洋哲学研究所の山本修一主任研究員による「自然破壊に対する大乗仏教の視点―自然の価値評価の観点から―」、大島京子研究員による「核兵器なき未来へ―仏教の平和理念からの考察―」の発表と質疑応答が行われた。

また、シンポジウムに先立つ19日午前に、研究発表大会として、以下の発表が行われた。

・トマス・アクィナスにおける悪の原因と宇宙の秩序(山崎達也 研究員)

・戦後日本の文化変動と宗教運動(大西克明 研究員)

・最近の中東イスラームにおける諸問題の要因と将来の展望(岩木秀樹 委嘱研究員)

・次世代との対話:2011年の変革期にアラブ詩人が鼓舞した役割(フランチェスカ・コッラオ 海外研究員)

20日の研究発表大会では、以下の発表が行われた。

・人工知能と信仰(前川健一 研究員)

・パルミラ王国の興亡の要因について(山田勝久 委嘱研究員)

・「わたし」の意識の存立基盤とその意識内容を推測操作する技術について(根本正史 委嘱研究員)

・日本国民の自殺の動向―――公衆衛生、特に精神・行動衛生の観点からの考察(山口力 委嘱研究員)

・学校・園における集団複雑性と自己複雑性:共生実践課題の定位のための図式(戸田有一 委嘱研究員)

・「ダイアナの馬」(牧野信一)と「ロリータ」(ウラジーミル・ナボコフの)比較考察~ダイアナ・モチーフの系譜として~(寒河江光徳 委嘱研究員)

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